(65)この1年 コロナ影響 傷心の時も

2020年12月22日 05時00分 (12月22日 14時01分更新)
リモート用のボードで、年末のごあいさつ

リモート用のボードで、年末のごあいさつ

  • リモート用のボードで、年末のごあいさつ
 がん患者になって五年。今年も、いろいろなことがありました。
 一番の変化は、社会復帰を果たしたこと。「食のバリアフリー」をテーマに、嚥下(えんげ)障害のある人たちが使いやすい食器をインターネット上で販売する会社・猫舌堂(大阪市)を仲間と立ち上げました。営業活動や打ち合わせなどで東京や大阪に行く機会も増えると思い、新幹線駅の近くに引っ越して、一人暮らしを再開しました。
 治療面では、分子標的薬、抗がん剤、放射線を体験し、今は肺に多発転移したがんの増殖を抑えていくことが当面の目標です。
 でも、予期せぬ形で大きな影響を受けたのは、新型コロナウイルスでした。
 対面の仕事が制限されてリモートが中心になり、新幹線を利用したのは結局一回だけ。依頼されていた講演会もほとんど中止になりました。昨年末には、愛知県がんセンターで開かれたがん患者たちの笑顔の写真展「ラベンダーリング写真展@名古屋」の企画運営に参加し、今年も愛知県内での開催を予定していたのですが、これも中止に。医療関係者と患者が一緒に作り上げていく活動に手応えを感じていたので、本当に残念でした。
 患者会関係の集まりやイベントもオンラインが主体になり「わー、久しぶり。元気だった?」とハグする喜びを味わえなくなりました。もともと、一人でいるのが平気なタイプで、どこへでも一人で行けるのですが、体調を崩したりすると「みんなに会えなくてさみしいな」と孤独感に襲われることが何度かありました。
 特に最近は「だれかと一緒に出掛けたい」という欲求が強くなり、一方で「今のご時世に不謹慎だ。医療現場を守るためにも自粛すべきだ」という気持ちも強くて、精神的に悶々(もんもん)としたりしました。
 そんなときに患者仲間の一人から「一緒に行かない?」と、あるイベントにメールで誘われたのです。「今、落ち込んでいたから、すごくうれしい」と返事をしたら「気分転換も必要だよね」と励まされ、救われた気持ちになりました。結局、そのイベントは中止になったのですが、共感してもらえただけで、とても楽になったのです。
 来年は、コロナも落ち着いて、みんなとハグできますように、自分の治療も順調でありますようにと、年の瀬の空に祈っています。(荒井里奈)
 

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