【岐阜新年特集】ボルダリング

2021年1月1日 00時00分 (1月2日 18時32分更新)
 牙のようにとがった先端と、側面の反り返りが特徴的な「牙岩」。下呂市金山地区にオープンした三つのボルダリングエリアのうち、「牙岩エリア」は白く滑らかな岩肌が特徴で、「中山七里」と呼ばれる飛騨川沿いの渓谷にある。周辺の甌穴帯(おうけつたい)は、同市の文化財に指定されている。
 「この岩を飛騨金山のシンボルにしたい」。巨石を生かした地域活性化の取り組みが本格的に始まったのは二〇一八年夏。歴史的な建物や史跡などを生かした地域振興を進めやすくした、同年の文化財保護法の改正が好機となった。
 この機を逃さず、地元でタイヤ販売会社を経営するボルダリング愛好家の杉山俊哉さん(48)が市教委をはじめ、地権者や地元自治会、観光協会などを訪ね、ボルダリングエリアとしての利用に賛同を求めた。「岩を傷つけない」との条件で許可が出た。
 さらに市に働き掛け、ボルダリングによる地域おこし協力隊員を募集。一九年四月、国内外の岩場でボルダリングの技術を身に付けた鈴木亘さん(34)が着任した。鈴木さんは、普及団体「飛騨金山クライミングコミッション」をつくって情報発信をしたり、古民家を改装してボルダリングジムをオープンさせたりしながら、地域を盛り上げている。
 残り二つのエリアは、火山灰とともに冷やされて固まった岩が随所に残り、ごつごつとした岩が連なる「火道角れき岩エリア」と、ザラザラとした感触の岩が並ぶ「麻生谷エリア」。前者は二〇年春、専門雑誌「ROCK&SNOW」(山と渓谷社)の表紙を飾り、後者は同誌夏号に取り上げられるなど、全国的に注目されるようになってきた。鈴木さんによると、新型コロナウイルスが落ち着いていた時期は、月に百人ほどが来ていた。
 昨年十一月初旬に麻生谷エリアを訪ねた。東京から来ていたクライマー、山田裕紀さん(38)にボルダリングの魅力を尋ねると、「同じ岩って世界で一つもないから。しんどいけど、登り切ると気持ちいい」。なるほど。心地よい大自然の空気の中で、岩の頂上から望む景色は格別なんだろう。
 とはいえ、課題もある。ボルダリングそのものでは地元に収益が落ちていないのが実情だ。鈴木さんは今後、会費を集めるファンクラブのような組織を作るか、お土産を作るなど、持続可能な運営のための構想を練っている。
 「金山でボルダリングを始めた子どもが大人になり、またその子どもが同じ岩を登ったら面白いよね」と鈴木さん。当たり前にあった岩を地域の宝へと変える取り組みは、始まったばかりだ。
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