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リニア工事 法廷に問う(6) 生活権、静岡は当事者

2020年12月21日 05時00分 (12月22日 17時18分更新)
「路線の大部分がトンネルのリニアは徹底した地質調査が求められる」と話す川村晃生さん=甲府市で

「路線の大部分がトンネルのリニアは徹底した地質調査が求められる」と話す川村晃生さん=甲府市で

 リニア中央新幹線の沿線一都六県の住民が、国の計画認可取り消しを求めて東京地裁に提訴した行政訴訟の原告団長で、慶応大名誉教授の川村晃生(てるお)さん(74)=甲府市=は静岡の裁判にも原告として名を連ねる。東京の訴訟では中間判決で原告や論点が絞られ、計画が南アルプスの自然環境に与える影響は議論されない見通しだが、静岡の裁判では水資源の問題と並んで南アの自然環境も主要争点。川村さんは、東京で外された論点を静岡地裁がどう扱うかがポイントと指摘する。
 東京地裁の中間判決は、南アの自然環境やリニアの安全確保を求める五百三十二人の原告の適格性を否定した。原告は工事で著しい被害を直接受けたり、恐れがある人に限られ、南アの自然を享受する利益などは「抽象的な公益で、保護すべき個人的利益とは言えない」とされた。
 川村さんも原告の適格性を否定された一人。「被害が起こってからでないと原告になれないようなもの。静岡でも直接的に影響を受ける懸念が大きい水問題は議論されても、東京の中間判決を受け、裁判所が南アの自然環境には後ろ向きな判断を下す可能性は否定できない」と話す。
 静岡では大井川の水を使って生活する住民が持つ「人格権」としての平穏生活権と、南アの良好な自然環境を享受する「環境権」などを根拠に提訴。裁判所がこれらの権利についてどう判断するのか、日本の司法の環境保護への向き合い方を知る点でも注目している。
 川村さんは流域住民が公的な場で直接JRに懸念をぶつける構図もポイントと指摘。「大井川の水を生活や農業、工業で使っている住民には、被害の実態がある。その点を主張することで新しい局面が見えてくる可能性がある」
 県が着工に同意しないため計画が遅れているとの見方も多いが、川村さんは静岡の裁判でそうした考えが見直される可能性もあるという。「実は工事は静岡以外の各地で遅れている。静岡の訴訟は原告の利害関係が明確で、住民の立場が共感を呼びやすい。問題を多くの人に知ってもらえれば」 (五十幡将之)
 =おわり

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