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リニア工事 法廷に問う(4) 静岡の登山家・有元利通さん

2020年12月19日 05時00分 (12月22日 17時18分更新)
3000メートル峰の聖岳や赤石岳を背に、南アルプスの自然について話す日本山岳会静岡支部長の有元利通さん=静岡市葵区で

3000メートル峰の聖岳や赤石岳を背に、南アルプスの自然について話す日本山岳会静岡支部長の有元利通さん=静岡市葵区で

 リニア中央新幹線の沿線一都六県の住民ら七百八十一人が国の工事認可取り消しを求めた行政訴訟の中間判決で、東京地裁は一日、南アルプスの自然環境保護などを求め原告に加わった五百三十二人の訴えを却下した。原告の適格性を棄却された一人で、静岡リニア工事差し止め訴訟の会原告団副代表を務める日本山岳会静岡支部長の有元利通さん(71)=静岡市=は「水資源と南アの自然環境保護は一つの問題だ」と訴える。
 有元さんは元高校教諭。大学生から登山を始め、三十八歳で日本百名山を踏破した。その後もアフリカ大陸最高峰のキリマンジャロなど国内外の山々に登頂。富士山登頂記録は九百八回を数え、県の高山植物保護指導員として南アの自然保護にも長年携わってきた。
 静岡の裁判に参加した理由も南アの自然環境の保護。「中下流域の水資源ばかりが注目されるが、その水はどこから来ているか。南アの自然が守られて初めて中下流域の水も守られる」
 台風やシカの食害で裸地になった山肌に柵やネットを設置し、植生の回復に取り組む。「岩や石、砂、土は水との微妙な関係で張り付いている。工事で山体(さんたい)内の水が抜けて地表や沢に出る量が減れば植生は失われ、土砂崩れも起こりやすくなる」と危機感を募らせる。
 JRが七月、国土交通省の有識者会議で「トンネル周辺で地下水位が三百メートル超下がる」と明かし、不信感が増幅した。「JRがデータを出し切っていない証拠」。裁判を通じ、住民が主体的に情報を出させる必要があると考えている。
 ただ、他県はもとより県内でも、必ずしも大井川流域住民が感じる不安への共感は得られていないと感じている。「東京都民は群馬県から利根川の水を、愛知県民は岐阜県から木曽川の水を、浜松の人も長野県から天竜川の水を引けるが、大井川流域は他から引けない。裁判ではそうした地理的な状況も発信していきたい」
 国への行政訴訟では利害関係がないと判断されたが、「では誰が国立公園やエコパークの自然を守っているのか」。静岡の民事訴訟では、南アの自然環境を享受する環境権も主要テーマで「南アを巡る議論は静岡が本丸」と期待する。 (五十幡将之)

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