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リニア工事 法廷に問う(3) 島田の米農家・桜井和好さん

2020年12月18日 05時00分 (12月22日 17時20分更新)
稲作の苦労や水への思いを語る原告団共同代表の桜井和好さん=島田市で

稲作の苦労や水への思いを語る原告団共同代表の桜井和好さん=島田市で

 原告団共同代表の一人、桜井和好さん(70)=島田市=は、八十アールの土地で米農家を営む。五十八歳まで中学、高校の理科の教諭を務めた。サッカー部の顧問としての実績が豊富で、サッカー元日本代表GKの川口能活さんは、東海大一中時代の教え子だ。
 五月に育苗し、六月に田植えをし、九月に収穫。その間に使う水は全て、大井川に頼る。ただ、「必要な時に蛇口をひねれば、水が出るのは当たり前じゃない」。大井川は頻繁に水不足になり、毎年のように取水制限がかけられる。直近では、二〇一八年十二月から一九年五月まで百四十七日間設けられた。
 土地改良区の絶妙な水分配のおかげで、実際の被害は出ていないが、「これ以上は危ないということは何度かあった」。だから、リニアの工事の影響で、何も対策を講じなければ、最大毎秒二トンの流量が失われる可能性があるとのJRの試算には、だまっていられなかった。
 以来、県とJR東海との協議や、国土交通省の有識者会議の状況も報道で細かくチェック。JRは「対策を講じるので、工事による影響は考えにくい」と主張するが、公表されない資料の存在が明らかになるなど、情報公開への姿勢や説明不足にも、疑念が膨らむ。それが原告団に加わった理由だった。
 裁判ならば、住民としてJRに直接問いただす機会になる。また、県とともに着工に慎重な立場をとる流域の首長へもアピールするつもりだ。「住民の揺るがない思いを法廷の場で明らかにすれば、簡単に立場を変えられなくなる」
 懸念するのは、川の表流水だけではない。地域では、大井川の伏流水も地下水として利用。桜井さんも地域の共同井戸からくんだ水でつくる、ウイスキーや日本酒の水割りが「絶品」といい、仲間と年に数回飲むのが楽しみという。
 「おいしさも大井川の恵みの一つのかたち」。それが失われるかもしれない疑念を、少しでも晴らしたい。 (大橋貴史)

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