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リニア工事 法廷に問う(1) 弁護団事務局長・西ケ谷知成さん

2020年12月16日 05時00分 (12月22日 17時39分更新)
 一月に静岡地裁で始まる県リニア工事差し止め訴訟。工事による大井川の水資源や南アルプスの自然環境への影響が県や国レベルで議論されている中、なぜ、流域住民は法廷に望みを託したのか。原告にインタビューし、思いを聞いた。

◆「人間の感情に訴えたい」

リニア工事差し止め訴訟について語る弁護団事務局長の西ケ谷知成弁護士=静岡市葵区で

 提訴の発起人となったのが、訴訟の会弁護団事務局長を務める西ケ谷知成(にしがやともなり)弁護士(48)=静岡市=だ。「リニアの問題は静岡の問題に凝縮されている。自分たちの飲み水のことが身に降りかかってきたら、平気でいられるか。素朴な人間としての感情に訴えたい」と理由を語る。
 西ケ谷さんは藤枝市出身。中学三年の時に憲法の授業で知った人権の概念に感銘を受けて法律家を志し、二〇〇三年に司法試験に合格。弁護士になる際は東京の労働系事務所への就職も考えたが、地元に貢献したいと県内の事務所に就職し、一二年に独立した。
 リニア問題に関わり始めたのは一七年。沿線一都六県の原告ら約七百八十人が国の工事認可取り消しを求めて一六年に東京地裁へ訴えた行政訴訟で、弁護団から「静岡の問題について書面を書いてほしい」との依頼を受けたのがきっかけだった。
 当時、リニア問題は報道で触れる程度。調べてみると、工事が静岡県をはじめ「沿線各地に取り返しのつかない影響を与えかねない」と感じた。それから三年。東京では行政訴訟という性質上、国の認可が違法か否かという形式面ばかり着目され、静岡の水問題が一向に議論されないことに危機感を強めていった。
 「このままでは、静岡の問題は正面から向き合われないままになるのでは」。一年ほど前から静岡での提訴の準備を進めてきた。
 提訴した場合の重責や労力を考えるとなかなか踏ん切りはつかなかったが、重大な人権侵害が起こり得る目の前の問題を見て見ぬふりすれば後々絶対に後悔すると感じ「提訴しなければ弁護士になった意味はない」と決断。声を上げると、リニア問題に関心の高い市民を中心に賛同の輪が広がった。半年かけて意見を集約し、訴状をまとめた。

◆利便性追求 どこまで

 「JRから住民が納得できる説明や証拠が出ていれば『だったら大丈夫、安心だ』という空気が広がっていたはずだが、現実にはそうなっていない。地域住民の生活を犠牲に、どこまで人間の利便性を追求していいのか、どこまで許されるのか。裁判を通じて問題を多くの人に知ってほしい」 (五十幡将之)

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