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天野教授の「パワー半導体」電気自動車がテスト走行

2020年12月10日 05時00分 (12月11日 12時41分更新)

サーキットを試験走行する「オールGaNビークル」

 ノーベル物理学賞受賞者の天野浩・名古屋大教授らの研究グループは、青色LEDの素材「窒化ガリウム(GaN)」の「パワー半導体」を部品に用いた電気自動車(EV)が走る様子を初めて公開した。GaNのパワー半導体を使うことで、車全体の消費電力を従来のEVより2割以上抑えることを目指しており、環境に優しい次世代型の車として期待されている。
 このEVは、昨年秋の東京モーターショーで発表された青色のコンセプトカー「オールGaNビークル」。全長約3メートルのコンパクトな4人乗りで、街中を気軽に走る近未来の車とのイメージで作製された。
 パワー半導体は、EVや家電、鉄道など幅広い分野で使われている電子部品。現在はほとんどシリコン製だが、電力ロスが大きいことが課題。GaNは、天野教授らが開発した青色LEDに欠かせない材料で、GaNのパワー半導体は発熱を抑えられるため電力ロスが少なく、省エネになると期待されている。
 グループの塩崎宏司・名大特任教授らはGaN半導体を使い、EVの動力源のモーターを制御するインバーター(電力変換装置)やレーザーライトなどを開発し、搭載した。今年春に試走に成功した。
 12月初め、愛知県蒲郡市内のサーキットで実施した走行試験を公開した。アクセルを踏むと、音もなくスーッと走り始め、加速も減速もスムーズ。インバーターへの負荷を考慮し、時速は約40キロに制限したが、「天野ブルー」と名付けられた青色の車体が快調に駆け抜けた。グループはGaN半導体を使ったコンバーターや充電器なども開発しており、10年以内の実用化を目指しているという。

オールGaNビークルの車内後部に搭載された、GaN半導体を搭載したインバーター

 記者も助手席に乗せてもらった。車内は白と銀色が基調で、目立つのはハンドルやパネルのみとスタイリッシュさだ。照明やウインカーなどはハンドル真ん中のタッチパネルで操作。バックミラーやサイドミラーはなく、代わりにカメラで撮影された3つの映像がダッシュボード上のモニターに映った。加速すると、ウィーンとモーター音が響く。「まだ開発中なので粗削りですが、未来が詰まっている」。運転席のチーフエンジニアが笑顔を見せた。
 天野教授は「初めて試走した時は、インバーターが壊れないか不安で、走っただけで感激したが、今は走るのは当たり前の性能になった。今後、単に省エネというだけではなく、量産のための技術を構築し、世界中の多くの方々に楽しんで乗ってもらえるように取り組んでいきたい」と話した。
 (芦原千晶)

オールGaNビークルの運転席

サーキットを試験走行する「オールGaNビークル」


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