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馬の「フォームが崩れる」とは具体的にはどういうこと?ハイスピードカメラで分析してわかった新事実

2020年12月4日 06時00分

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2019年日本ダービーのゴールシーン

2019年日本ダービーのゴールシーン

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 厩舎の現場や、競馬原稿に使われる言葉の中には分かったようでよく分からないものが多い。例えば「しまいがしっかり」。追われて負荷が上がったり、長めから乗って疲労が蓄積してきても、走行フォームが崩れずに安定し続けているといった理解でおおむね正しいが、もう一歩踏み込んでフォームが「崩れる」とか「安定する」とは具体的にどのような状態を指すのか。
 先月30日から10日まで、学会員に限ったウェブセッションの形で「第33回日本ウマ科学会学術集会」が開催中だ。この中で、JRA競走馬総研運動科学研究室が、疲労による走行フォームの変化を調査報告している。
 2016~19年の日本ダービー出走馬72頭が対象。ゴール板前約20メートルにハイスピードカメラを設置し、各馬の1完歩における四蹄の着地タイミング、着地点の距離を測定した。それぞれの1完歩が1周目、ゴール前ともに完全に観測できたのは23頭。この23頭から、ピッチやストライド長、走速度がどのように変化するか解析している。また、走速度を平準化して、フォームそのものがどのように変化しているのか検討している。
 結果、1周目に比べ、ゴール直前ではピッチが減少し、ストライド長が延びていた。もう少し詳しく見ると、後肢のうち着地タイミングが後になる「手前後肢」の着地点から、前肢のうち、先に着地する「反手前前肢」までの距離は短くなる一方、後肢同士、前肢同士の距離は延長。四蹄が全て浮いたまま進む距離も延びていた。
 総合すると、疲労によって体は十分に背中を伸ばすことができなくなってピッチが減り、浮いている時間と前同士、後ろ同士の振り幅を広げてストライドを延ばしている。四蹄が全て浮くと、馬体は地面に対して力を加えることができない。疲労蓄積を受けたフォームの変化は、こうした要因が背景にあって馬の駆動力をそぐことになっている。
 記者は追われてしっかり肩が出る馬を好調教と判断することが多いが、バイオメカニクスの側面からも、この判断基準が裏付けられたと考えている。

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