<#不登校> 中学に「校内フリースクール」

2020年12月3日 05時00分 (12月3日 05時00分更新)
 不登校の小中学生数が全国で最多を更新する中、愛知県岡崎市教委は本年度、中学校に初めて「校内フリースクール」を開設した。不登校傾向の生徒に限らず、日々の学校生活で困り事がある生徒のための新たな学び場。福島県や横浜市などでも始まったが、全国的にはまだ数少ない取り組みという。岡崎市の本年度モデル校は三校で今後拡大する方針。その先鞭(せんべん)をつけた福岡中学校を訪ねた。 (宮崎厚志)
 十月下旬の木曜日。カーペットが敷かれ、ソファを備えた明るい室内で、元教員の支援員が東京の難関私立中の入試問題を数学の得意な生徒に見せると、すぐにテーブルに輪ができた。五人の生徒がにぎやかに議論し、答えに近づいていく。公立中の中にありながら授業はなく、一方で生徒同士が関わり合う学びはしっかりとあった。
 甲山(こうざん)中、矢作中と共に三校で始まった新学級の名はフリースクールの頭文字を取った「F組」。不登校は「年間三十日以上の欠席」という文部科学省の規定は関係ない。通常学級に不安や困り事のある生徒、日本語での授業についていけない外国籍の生徒など希望者は全て受け入れる。
 昨年度までは岡崎市立中の全二十校に「校内適応指導教室」があり、不登校傾向の生徒を通常学級に復帰させることを目指してきた。うち三校で発展解消して誕生したのがF組だ。通学しやすい地元の中学校内で多様な学びの場を保障し、社会的な自立に向けて支援する。必ずしも通常学級への復帰は目指さず、生徒個々の希望に寄り添う。
 福岡中では毎日七、八人が集まる。一日四こまの学習時間はタブレット端末で自主学習をしても、校内授業のライブ配信を視聴しても、読書や芸術活動をしてもよい。家庭科の調理実習や音楽、体育など、自分の好きなことを見つけられる技能教科は、皆で話し合い、主体的に取り組む。技能教科で自信を付け、通常学級に合流した生徒もいる。
 特徴は大きく二つ。校内で一番居心地が良い部屋を使い、校内で一目置かれる「エース級」の教員を担任に据えること。教員として長年不登校と向き合ってきた安藤直哉教育長(59)が三校に開設を依頼した際に強く要望した点だ。不登校は最重要課題だと内外に表明する意味もある。
 これに応えた福岡中の山内貴弘校長(56)は、本年度の学校目標に「本気でめざす不登校ゼロ」を掲げた。F組の部屋は来賓用の和室を転用し、担任に周囲の信頼が厚い鈴木崇之(たかゆき)教諭(43)を配置。その役割を「コーディネーター」とした。生徒の細かなニーズを察知して通常学級の担任や専門教科の教員らにつなげ、学校全体で応える仕組みを機能させるためだ。鈴木教諭も「先生たちが真剣に不登校をゼロにしようと考え、積極的にF組に関わってくれる。その雰囲気をつくれたことが大きい」と手応えを感じている。
 福岡中は数年前から、部活動改革や関係機関との連携など、多くの施策に取り組み、不登校生徒数は徐々に減少。さらにF組が生徒や保護者のよりどころとなることで、ほぼゼロに近い状況になった。
 山内校長は言う。「不登校生徒はエネルギーのないナイーブな子どもではない。どの子も生きようとするエネルギーを持っている。F組はそれを醸成する空間なんです」

 保育士の夢、かなえたい F組で居場所できた女子生徒

 「みんなとは違う、不登校の子は無理かなって夢を諦めていた。でも今は先生たちが応援してくれる。『保育士になりたい』と積極的に思える」。福岡中3年の女子生徒はF組に軸足を置きつつ、今は通常学級にも顔を出す。
 小学生の頃から勉強が苦手で休みがち。「私だけ分からないまま授業が進む。どんどん不安になって教室に入るのも辛(つら)かった」。福岡中入学後も不登校傾向が続き、昨年は校内適応指導教室「コスモス」で主に過ごしていた。
 F組では午前遅めに登校し、中学1年の内容から自分のペースで勉強。居場所ができると周囲を気遣う性格も生き、自然と輪の中心に。悩みを抱えるF組の後輩と一緒に別室で給食を食べるなど仲間のサポートにも心を砕く。
 ピアノの個人レッスンも受ける。保育士の夢を鈴木教諭に打ち明けると、音楽の専門教員の空き時間を確保してくれた。第1志望は保育科のある高等専修学校に。F組の活動として学校近くの保育園に見学に行く予定だ。
 「普通って何だろう、私は普通じゃないのかなって、よく考えていた。でも今はここが私の普通。一人じゃないんだって思えたから」。他の生徒からの視線は、もう気にならなくなった。
     ◇
 あなたの不登校体験、今どうしているか、世の中や学校にぶつけたい思いを教えてください。
 中日新聞教育報道部
 kyoiku@chunichi.co.jp

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