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「アジア記録突破がスタートライン」ブレードランナーは東京パラ五輪へ照準

2020年12月2日 10時37分

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競技用の義足をつけてトラックを疾走する大島健吾

競技用の義足をつけてトラックを疾走する大島健吾

◇名古屋学院大3年 大島健吾(20歳)
 パラ陸上の短距離界にすい星のごとく登場した。名院大3年の大島健吾(20)が、今年9月に行われたパラ陸上の日本選手権男子100メートルの片足義足クラス「T64」で初優勝。陸上を始めてわずか2年半で頂点に立った若武者は、2021年の東京パラリンピック代表を目指し、まい進している。
 生まれつき左足首から先がなかった。それでも大島は小さいころから体を動かすことが大好きだった。通常の義足をはきながら、水泳やサッカー、卓球などさまざまなスポーツを経験した。
 瀬戸西高では、2度の花園出場を誇る強豪のラグビー部に入部。義足では踏ん張りが利かずに細かいステップに苦戦したが、「特別視されたくない」との思いでフランカーのレギュラーを勝ち取った。
 ラガーマンとして一層スポーツの魅力を感じる中、出合ったのがパラ陸上だった。静岡県であったイベントで、第一人者の佐藤圭太(29)らがブレード(競技用義足)をはいて疾走する姿に魅了された。「いろいろやってみたいと思う性格。大学で絶対やろうと思った」。名院大に入ると本格的に競技を始めた。
 「ちっさいころは(足を)気にしたこともあるけど、中学ぐらいでどうでもよくなった。義足であることがハンディと思ったことは全くない」
 いざブレードを使ってみると、バランスを取ることに苦戦した。ラグビーで染みついていた前傾姿勢の走り方も、ブレードには合わなかった。最初は真っすぐ100メートル走るだけで疲れ切った。
 陸上を始めて3カ月で出場した大会での記録は12秒86。納得いかなかったが、へこむことはなかった。「足が流れることや上半身のぶれなど直すポイントがたくさん見つかった。伸びしろしかないなと思った」。前向きな姿勢で鍛錬に励むと、徐々にブレードでの走り方を習得。手応えをつかみ、今年9月の日本選手権に臨んだ。
 相手は佐藤や井谷俊介(25)ら同じ部門を代表するブレードランナー。強敵相手だったが、フランカーとしてタックルで培った得意のスタートダッシュが決まった。逃げ切りでの11秒93の快勝。周囲は番狂わせと沸き立ったが「絶対勝てるという気持ちしかなかった。でも記録が悪かったので納得はいってない」と満足することはなかった。
 翌月には自己ベストを大幅に更新する11秒59を記録。アジア記録の11秒47を射程圏内に入れるが「僕の中ではアジア記録を破ったところがスタートライン」とあくまで先を見据える。
 アジア記録を破れば、東京パラリンピックにも出場できる可能性が高い。「延期がなかったら出場はできなかったからチャンスだと思う。まだまだ走りの癖も抜け切ってないし、理想の選手像には程遠い。だからこそ伸びしろもあるし、自然とアジア記録を抜くぐらいの気持ちで試合に勝ち続けたい」。愛知のブレードランナーが見据えるのは、あくまでも世界の舞台だ。
 ▼大島健吾(おおしま・けんご) 2000(平成12)年1月1日生まれ。愛知県瀬戸市出身の20歳。172センチ、68キロ。西陵小ではサッカーと水泳、水野中では卓球、瀬戸西高ではラグビーを経験。大学から陸上競技を始め、2020年9月6日の日本選手権T64男子100メートルを11秒93で優勝。10月には自己ベスト11秒59を記録した。三つ子の長男。

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