AIで高付加価値トマト栽培 ハッピークオリティー

2020年12月2日 05時00分 (12月2日 11時40分更新)
トマトのハウスに設置されたカメラ(中央)。葉のしおれ具合を観察し、AIが自動で水やりをする鍵となる=袋井市で

トマトのハウスに設置されたカメラ(中央)。葉のしおれ具合を観察し、AIが自動で水やりをする鍵となる=袋井市で

  • トマトのハウスに設置されたカメラ(中央)。葉のしおれ具合を観察し、AIが自動で水やりをする鍵となる=袋井市で
  • AIがタイミングを判断し、根元に差し込まれた黒い管(左側)から養液が注入される=袋井市で
 真っ赤に熟した実がぶら下がる隙間から、白い筒状のカメラがのぞく。茎が大人の背丈ほどに伸びたトマトが並ぶ袋井市内のビニールハウス。レンズが「凝視」するのは、葉のしおれ具合だ。人工知能(AI)を使って自動で水やりをするため、一定の間隔ごとに設置して株の渇きを見極めている。
 ハウスを手掛けるのは、農業支援ベンチャーのハッピークオリティー(HQ、浜松市南区)。抗酸化作用があるリコピンを豊富に含むトマト「ハピトマ」を通年で栽培する。糖度は六〜一〇度で、一般的なトマトより高め。甘くて付加価値が高いトマトを安定的に出荷するため、ひと役買っているのが二年前に導入したこの自動給水システムだ。
 トマトは水分を抑えて栽培すると糖度が高まるため、水やりをギリギリまで待つことで甘さが増す。「しおれ始めてからでは遅い」と宮地誠社長(46)。枯れていく兆候をデータに基づいて適切に検知するのが、多くの画像で葉の特徴を「学習」したAIだ。
 分単位でカメラから送られる画像で、AIは葉が下を向く角度を観測。その変化に加えて、温度と湿度、明るさもセンサーで測定した上で、茎が弱る前の最適なタイミングを見計らい、養分が入った水を自動で根元に注入する仕組みだ。宮地さんは「職人技の勘に頼らず、トマトと『対話』できる」と強調。人手がかかっていた給水作業をほぼ無人化でき、効率的な「スマート(賢い)農業」につながる。
 宮地さんは浜松市内の卸売会社に二十年余り勤め、独立して二〇一五年にHQを設立。青果の卸売りを続ける中、静岡大情報学部の峰野博史教授(45)がAIを駆使した青果栽培を研究していることを知った。ハウスでの実証実験を持ち掛け、実用化に結び付けた。
 HQはシステムを使ってトマトの栽培、販売をするだけでなく、農家にシステムの売り込みもしている。現在はグループ会社を含め、トマト栽培が盛んな静岡、愛知両県の四軒が導入し、年間百トンの生産が可能となっている。
 農家とは、システムを使って栽培したトマトをHQが固定価格で買い取る契約も結んでいる。中玉なら、一キロ当たり六百円と市場の平均価格より高めに設定。野菜は天候などの影響で価格が大きく変動するが、農家の安定的な収入確保に貢献していきたい考えだ。
 宮地さんは今後、契約件数を増やし、地元のスーパーを中心に販路拡大を目指す。中でも、若年層の新規就農者に対し、重点的にシステム導入を呼び掛けていくつもりだ。「経験不足をAIでカバーできるので、技術に不安がある生産者が成長できる好循環を生み出せる。それが農業の活性化につながり、使われなくなったハウスの再活用も進む」と宮地さん。長期的な視点に、農業コンサルタントとしての表情ものぞかせる。 (久下悠一郎)

 <ハッピークオリティー> 2015年2月設立。高糖度のトマトや、腎臓病患者らに配慮した低カリウムのメロンの栽培といった農作物の高付加価値化を研究、流通販売を手掛ける。従業員5人。資本金9100万円。20年にソニー傘下のスタートアップ投資会社などから資金調達を実施し、AI給水システムの普及や性能強化を図る。


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