ゲームで考える高齢期 

2020年12月1日 05時00分 (12月1日 11時44分更新)
 人生終盤に大切にしたい価値観は? 親が認知症になったら? 「老いと死」を自分のこととして考えるためのゲームを、愛知県内のグループが相次いで作った。国は、終末期に受けたい医療やケアについて事前に話し合う「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の普及を進めるが、広がっていない。「縁起でもない」というハードルを、ゲームの楽しさで跳び越えることを目指す。 (編集委員・安藤明夫)

「大切な価値観」カード選択 愛知県内で製作 


自分の思いに合った4枚のカードを選び、最後にその理由を発表する=愛知県美浜町の渡辺病院で


 一つは、超高齢社会の生き方を考える「人生100年これからゲーム」。十一月三十日の「いいみとりの日」に発売された。美浜町の渡辺病院、常滑市民病院など知多地域の医療や看護関係者らが、地元の高齢者五百三十四人へのアンケートを基に製作。高齢者のレクリエーションを手掛ける「プレイケア」(東京)が協力した。
 五十二枚のカードを医療、生活ケア、人間関係、その他の価値観という四分野、十三枚ずつに色分け。カードにはそれぞれ、人生百年を全うするために大事にしたいことが書かれ、一〜十三の番号はアンケートの人気順を示す。医療の一位は「痛みや苦しみがないようにしてほしい」、生活ケアは「トイレ・排泄(はいせつ)のことは自分でしたい」、人間関係は「家族に迷惑をかけないようにしたい」、その他は「静かに眠るように旅立ちたい」だった。
 四人で遊ぶのが基本で、一人四枚ずつ配布。残りを裏返して中央に置き、順に一枚ずつ取っては不要なものを捨てる。前の人が捨てたカードを取ってもいい。中央のカードがなくなるまで繰り返し、最後に四色のカードが一枚ずつ残るようそろえたら、それを残した理由を発表する。自分の考えをまとめ、別の人の意見を聞く機会にも。考え方は日々変わる。家庭や老人会などの機会を使って何度も体験してほしいという。
 同種のゲームでは、亀田総合病院(千葉県)の医師らが翻訳した米国生まれの「もしバナゲーム」が有名だ。渡辺病院の中村了(あきら)副院長(50)は先駆的な活動に敬意を表する一方で「日本の高齢者の思いを形にしたかった」と話す。中村副院長は「ACP普及のためにも、最期についてゲーム感覚で気軽に話し合える文化を定着させたい」。
 送料込み二千五百円。(問)プレイケア=フリーダイヤル(0120)615610(平日正午〜午後二時)

介護学べるすごろくも



 もう一つ、「オレと親父(おやじ)の認知症ライフ(オレ親)」は、認知症になった父親を家族で介護する設定のすごろく=写真。西尾市で介護施設を経営する田中正大さん(43)ら「福祉の未来を考える勉強会」に参加した四人が二年がかりで完成させた。こちらも四人までで遊ぶ。
 「親父の様子がなんか変だ」から「心の準備を始める 最後の思い出作り」まで症状を九段階に分けたカード三十六枚と、「介護申請」や「施設申込」など避けて通れない「一時停止」のカード五枚をますに見立てて並べ、サイコロを振って駒を進める。カードを裏返すと「なんでジャンパーを着てるの!? 今は夏だよ!」「家の中で転ばないように手すりをつけてもらおう」「実家に連れていってあげることができた」など、その時々の出来事が書かれている。
 一つ一つの出来事によって増えたり減ったりするのが「幸せポイント」で、高い人が優勝。医療や看護、介護のさまざまな専門職を表す「お助けカード」、家族の介護力を示す「家族チップ」をうまく使うことがポイントを増やすこつだ。
 田中さんは「介護を始めると出合う言葉を知り、家族の絆やみとりの在り方を自分のこととして体験してほしい」と話す。認知症カフェなどで専門職が解説しながらプレーしてもらうことを考えており、同市内で行政・福祉関係者らに説明会を開くなどしている。製作に携わった大府市の国立長寿医療研究センターの川嶋修司医師(55)は「認知症のケアに関わる問題で医療だけで解決できるものは少ない」と指摘。「どんな介護サービスがあるかを知るきっかけにして」と話す。
 三千三百円(送料三百七十円が必要)。購入は「オレ親製作委員会」のホームページから。

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