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<ユースク>雇用保険過少分給付、回答したのに 厚労省、9カ月返事なし

2020年12月1日 05時00分 (12月1日 05時01分更新)
雇用保険の追加給付の対象者に送られた厚労省の「お知らせ」文書

雇用保険の追加給付の対象者に送られた厚労省の「お知らせ」文書

 2018年末に発覚した厚生労働省の「毎月勤労統計」の不正調査問題を受けて、統計を基に算出される雇用保険の過少分を追加給付する作業の完了のめどが立っていない。岐阜県瑞穂市の40代の女性会社員から「今年3月に(給付のための)回答書を厚労省に郵送したが、何の返事もありません」との情報が、中日新聞「Your Scoop〜みんなの取材班」(ユースク)に寄せられた。取材すると、対象者が膨大なのに加え、新型コロナウイルスの感染拡大で事務作業が滞り、現場はパンク状態に陥っていた。 (石井宏樹)
 女性は〇五年に勤めていた企業を退職。転職先が決まるまで三カ月間、雇用保険の失業給付を受け取った。今年二月になって「追加給付の対象者の可能性がある」との「お知らせ」が厚労省から届き、翌月には指定事項を記入して返信した。
 しかし、その後の連絡はなく、六月と十月にコールセンターに問い合わせたが個人の照会もせずに「手続きが遅れている」と繰り返すばかり。「自分の回答が届いているか」との疑問にさえ、答えてもらえなかった。
 厚労省によると、不正は〇四年から長期にわたったため、追加給付の対象者は延べ千九百万人に上る。回答書に誤りがなければ振り込みまでの手続き自体は一カ月程度で終わるというが、実際には半年以上、待たされるケースが出ている。既に支給された人は十月末時点で全体の四割にとどまる。
 対象者の多さに加え、同省が理由に挙げるのがコロナ禍だ。担当者は「今春、職員に出勤制限がかかり、人手不足に拍車が掛かった。対象者が多い都市部を中心に手続きの遅延が起きた」といい、今後の感染状況によってはさらなる遅れも予想される。「追加給付が完了するめどは立っていない。回答の順番通りに処理しており、待ってもらうしかない」と理解を求めた。
 女性が受け取れる追加給付金は見積もりで千三百円程度。憤りの原因はお金が欲しいからではない。「不正をして、膨大な人件費と時間もかけているのに、問い合わせに回答もない。民間なら考えられない」
 不正によって国が返還する追加給付の総額は二百八十億円。そのために必要な事務費は百七十七億円に達し、雇用保険料として労使が負担する。コロナ禍の影響に関しても、女性は「出勤制限から半年もたち、みんな経済を回すために働いている。ここまで遅れる理由にはならない」と納得できない。「(職員らの)処分も軽いし、厚労省がそもそも重く受け止めていないのでは。処理が長引けばさらに経費が増える可能性もある。(低額の追加給付など)無駄な作業をやめ、失業や休業の対策に使ってもらった方がすっきりする」とあきれたように話した。

 勤労統計の不正調査問題 厚生労働省が公表する「毎月勤労統計」で、東京都の事業所分の調査が2004年から15年間にわたり、本来の全数ではなく3分の1程度の抽出で実施されていた。統計を基に額を算出する雇用保険や労災保険で膨大な過少給付が発生。厚労省は昨年1月、次官ら22人を訓告処分などとした。不正な調査方法は複数の職員間で引き継がれ、マニュアルの存在も指摘されたが、問題を調査した同省特別監察委員会は組織的な隠蔽(いんぺい)工作は認めていない。


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