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プロ野球界で相次ぐ契約更改保留…球団に選手会が抗議文も 互いに信頼関係を深めて共存共栄の道を歩んでほしい

2020年11月29日 10時36分

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契約更改交渉で保留した中日・福谷

契約更改交渉で保留した中日・福谷

[ヘンリー鈴木のスポーツ方丈記]
 私が所属するロックバンドが毎年出演していた東京・銀座のライブハウスが、店を閉めることになりました。ビル所有者との契約が来年3月で切れ、更新しないことを決めたそうです。メールの文面にはこのような一文も添えられていました。
 「4月以降に関しては、新しい店舗のオーナーさんが決まった場合はオーナーチェンジで営業をしていく予定ですので、ライブレストランにご興味のあるお知り合いの方がいらしたら、是非ご紹介頂けますと助かります」
 新型コロナウイルスの感染拡大の標的にされたライブハウスは、昨年までのような営業をすることが、ままならなくなりました。このようなお店が今後も増えていくと思うと、文化のともしびが一つ一つ消えていくことに、とてつもない寂しさを覚えます。
 そのような最中、プロ野球の契約更改交渉が始まりました。そして予想通り、保留者が相次いでいます。
 今季のプロ野球はレギュラーシーズンの試合数を当初の143試合から120試合に削減して無観客でスタートし、最終的に総観客数はセ・リーグが昨季から81%減の275万4626人(1試合平均7652人)、パ・リーグが82%減の206万8952人(同5747人)でした。球場でのグッズ販売や飲食の売り上げもこれに伴って減少しています。一般の企業なら倒産してもおかしくないレベルです。
 しかも今季は選手に対して、昨オフに結んだ年俸ベースを全額保証しました。この点は、レギュラーシーズン162試合を60試合に削減した大リーグが今季年俸を日割りにして大きく減額したのとは大きく異なります。
 そのために頭を痛めているのが日本プロ野球選手会です。今季の支配下727選手(外国人、育成契約は除く)の選手会への自己申告による平均年俸は4189万円。もちろん年俸数億円を得ている選手から最低保証440万円までさまざまですが、1軍のトップクラスで活躍する選手への世間のイメージは「お金持ち」でしょう。
 そのような選手たちが倒産や失業者が相次ぐコロナ禍でも今季の年俸が保証され、来季の年俸もつり上げようとしている印象を持たれることは避けたいのです。保留者が3人出ているドラゴンズ球団に対し、選手会の森忠仁事務局長が11月28日に「一方的に所属選手が年俸金額で揉めているかの印象を与える発言をするなど、選手と球団の信頼関係を維持できない状況が発生しています」とする抗議文を出したのは、このような背景があります。
 今オフは、全選手の年俸が一律カットされるところから交渉がスタートするのではという危惧もありました。最悪の事態だけは12球団との確約で避けた選手会は「各球団の財務状況が苦しいことは十分理解できる」とした上で、交渉に臨む選手たちに対して「球団側の説明に納得できなければ保留を」と呼び掛けています。
 一方の球団側も、その多くは親会社の経営状況も含めて「ない袖は振れない」と、厳しい姿勢を貫くことが続くと予想されます。
 今季年俸を大幅に減額した大リーグは、そのために来季以降の契約の一層の難航が予想され、球団の身売りやストライキの可能性も示唆されています。そうならないためにも各球団は個人事業主でもある選手たちに財務状況も含めて誠実に対応、説明し、お互いに信頼関係を深めて共存共栄の道を歩む決意を固めていくしかないと思います。
 選手と球団がモヤモヤと不信感を抱いたまま来季のキャンプ、そして開幕に臨むような光景だけは見たくない。ファンは皆、そう思っています。
 ◆ヘンリー鈴木(鈴木遍理) 東京中日スポーツ報道部長、東京新聞運動部長などを経て現東京中日スポーツ編集委員。これまでドラゴンズ、東京ヤクルトスワローズ、大リーグ、名古屋グランパス、ゴルフ、五輪などを担当。ロックバンド「ガ・セネターズ」ではギターとボーカル担当。
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