県民衛星 打ち上げ心待ち 共同開発「すいせん」お披露目 

2020年11月27日 05時00分 (11月27日 09時41分更新)

3月20日打ち上げ予定の県民衛星「すいせん」(手前)=26日、東京都のアクセルスペースで


 宇宙産業のベンチャー企業「アクセルスペース」(東京)は二十六日、県などと共同開発した県民衛星「すいせん」を含む超小型人工衛星四機を同社で報道陣向けにお披露目した。県民衛星は自治体が主導し、県内企業とともに進めた全国初の取り組みで、同社の中村友哉社長は「他の自治体や企業へのモデルケースとなる」とアピールした。 (長谷川寛之)
 四機はそれぞれ重さ百キロ。来年三月二十日にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地からロシアのロケット「ソユーズ2」で打ち上げる。同社がすでに打ち上げている一機とともに地球全体を観測する。上空六百キロから最新の光学系・センサーを用いた望遠鏡で撮影し、地上の二・五メートルの大きさの物を識別できる。
 この画像や得られるデータを使って農作物の適切な収穫時期の見極めや、災害時の被害把握など幅広い利用方法がある。
 県民衛星の製造、利活用に向けて二〇一六年八月、県と県内九社、アクセルスペース、富士通(東京)で県民衛星技術研究組合を設立。県内九社のうち製造はセーレン(福井市)、鯖江精機(越前町)、春江電子(坂井市)、山田技研(福井市)、タイヨー電子(鯖江市)、ナカテック(坂井市)が、衛星データの利活用システムなどはネスティ(福井市)、福井ネット(同)、福井システムズ(坂井市)が担った。
 県民衛星の技術指導に当たった東京大航空宇宙工学専攻の中須賀真一教授は「人工衛星を使って『こんな事ができるようになった』というのが広まることが大事。その事例となる県民衛星は意義深い」と評価。中村社長は「人工衛星を製造するだけではなく利活用まで至った事は画期的」と話した。

 宇宙ビジネス期待“搭載” 県内参画企業「成功祈る」

打ち上げカウントダウンボードを除幕し笑顔の進藤理事長(左)、山田専務理事=26日、県庁で(山田陽撮影)

 県民衛星「すいせん」を製造した、県内企業などでつくる県民衛星技術研究組合の進藤哲次理事長(ネスティ社長)と山田英幸専務理事(セーレン常務)は二十六日、県庁で会見し「四年間をかけた事業。春分の日、スイセンの時季に打ち上げが成功するよう祈っている」と話した。
 打ち上げは、参画企業にとって宇宙ビジネスのスタートでもある。組合では、人工衛星の撮影画像を地形の監視などに活用できるパソコンソフト「衛星画像利用システム」を開発し、八月から福井県で試行してもらっている。組合では打ち上げ日の正式決定を受け、来年四月から全国の自治体や民間にシステムを販売していくことにした。
 すいせんは都道府県別などの定めた範囲を宇宙から撮影でき、画像を拡大すると家や道路の形まで判別可能。ソフトに取り込むことで、森林や河川の定点観測などに幅広く使える。進藤理事長は「福井県で衛星を打ち上げ、画像データを提供するのは大きなビジネスになる。データも適正価格で販売したい」と述べた。
 重さ百キロ級の超小型人工衛星を製造するノウハウも身に付けた。山田専務理事は「衛星製造は実績が重視される。『すいせん』製造を経験したわれわれはこれから強みを生かせる」と語り、人工衛星の製造受注も視野に入れていくとした。
 二人は会見会場で打ち上げへのカウントダウンボードを除幕。打ち上げまで「百十四日」と表示された。新型コロナで打ち上げが延期になっていただけに、ほっとしたような笑顔を見せた。 (尾嶋隆宏)

関連キーワード

PR情報