“ノーヒット継投”に思う…残したいくつもの非常識が今は「常識」に 落合采配は時代がほんの少し早かった

2020年11月25日 10時56分

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ソフトバンク3番手の森(手前)からウイニングボールを受け取る先発ムーア。右端は2番手モイネロ、左端は工藤監督=24日、ペイペイドームで

ソフトバンク3番手の森(手前)からウイニングボールを受け取る先発ムーア。右端は2番手モイネロ、左端は工藤監督=24日、ペイペイドームで

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渋谷真コラム・龍の背に乗って【日本S特別編】


◇24日 SMBC日本シリーズ第3戦 ソフトバンク4ー0巨人(ペイペイドーム)
 あと一人からの安打にも、僕の心はちっとも揺れなかった。胸が高鳴っていたのはその前だ。ムーアが「やる」か「やらない」かではなく、工藤監督が「代える」か「代えない」か。中盤に入ったところで某評論家さんから「ノーヒットノーランリレー、あるなあ」と声をかけられたが、僕も同意見ではあった。
 2007年の完全試合も、18年のクライマックスシリーズ(CS)で巨人・菅野がやったノーノーも球場で取材した。13年前の僕は「たぶん代える」、「きっと代える」、「ああ、やっぱり…」と思っていた。「ああ」の理由は、その後の騒ぎが目に見えていたからだ。岩瀬に代えた落合采配は、勝ってなお物議を醸し、波紋を広げ、賛否渦巻いた。
 「この大きな舞台でなかなかノーヒットには抑えられない。心技体、しっかり調整してくれたんだと思う。ただ、少し疲れが見えてきたのと、どうしても勝ちたかった。ペイペイドームで負けるわけにはいかない。すいません。7回で代えさせていただきました」
 ムーア93球。工藤監督の言葉にスタンドからは支持の拍手が降り注いでいた。8回はモイネロ、9回は森という強固な方程式があるからだ。記録より勝利。同時に故障予防という絶対の使命への理解が広まった。
 時代がほんの少し早かったのだ。落合監督が残したいくつもの「非常識」がある。故障者の育成選手としてのリスタート、コンディションを優先した日本代表の辞退、CS直前の全員抹消、引退選手特例制度、そしてパーフェクトリレー…。その瞬間は黙殺か非難の対象となったが、今は「常識」となり、制度化された。退任後、その話をしたら、ただ笑っていたっけ…。
 野球はこの13年でさらに変わった。記録があろうとも継投と分業。だからこそ誇らしい。われらが沢村賞左腕が、とんでもない時代錯誤であることが。

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