GoTo混乱 責任回避が目に余る

2020年11月25日 05時00分 (11月25日 05時00分更新)

 菅義偉首相が「GoTo」事業の見直しを表明した。ただ変更の中身が完全には明確にされていない上、対応を自治体に委ねる姿勢も目立つ。国は政策の実行責任者として強い自覚を持つべきだ。
 菅首相は先週末これまでの姿勢を一転し、事業を一時制限する方針を示した。しかし新型コロナはその前から急激に再拡大しており、事業継続を懸念する声も出ていた。首相判断は遅きに失したといえるだろう。
 今回、感染の増減に応じて事業を縮小したり停止したりする具体的な手段や基準がなかったことも露呈した。感染の再拡大は容易に想像できたはずだ。政策の出口戦略を用意していなかった形であり、国に猛省を促したい。
 西村康稔経済再生担当相は感染増減の見通しについて「神のみぞ知る」とし事業の利用についても「国民の判断だ」と述べた。この姿勢は国策の結果を旅行者や観光産業、各自治体に丸投げしたに等しく強く批判せざるを得ない。
 東京都の小池百合子知事や愛知県の大村秀章知事ら各知事は、事業を見直すにしても国が一定の基準を示してほしいと要望している。自治体が国と擦り合わせもせず、ばらばらに対策を実行しても効果は薄いためだ。
 知事らの求めは当然で国の対応に不備があるのは否定できない。ただ喫緊の課題は、経済とのバランスに留意しながら感染拡大をいかに食い止めるかだ。国と自治体は責任のなすり合いを避け、直ちに共同歩調を取るべきだ。
 GoTo事業が観光産業の支援に効果があることは間違いない。ただ問題は実施のタイミングだ。今回も見直しの動きが本格化したのは人出が確実に増える三連休の後だ。今夏の事業開始時も感染拡大と重なった。
 観光産業の苦境を考慮すれば見直しの判断が難しいことはある程度理解できる。だが感染拡大は国民の命に直結した問題だ。コロナ禍で苦しいのは観光産業だけではない。観光に限らず解雇や雇い止めは増え続けており経済全体を公平にみる姿勢も重要だ。
 GoTo事業はトラベルだけでも約一兆三千億円という巨額の国家予算が投じられている。今足りないのは責任を持つ菅首相の強いメッセージだ。
 今後、コロナ禍対策とGoTo事業を具体的にどうやって舵取(かじと)りしていくのか。首相が自らの考えを自らの言葉で国民に語るべきである。 

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