(63)4度目の放射線 「これで最後」相棒と退院

2020年11月24日 05時00分 (11月24日 12時17分更新)
 少し前から、左腕全体にしびれを感じるようになり、検査を受けたところ、以前に治療した首の神経の腫瘍がわずかに大きくなっていることが分かりました。これが神経に影響しているとのこと。先生方と相談し今月中旬、四度目の放射線治療に踏み切りました。
 最初の放射線治療は五年前、舌の切除手術の後、再発転移を防ぐため、口から喉にかけて広範囲に。その後、目の裏にある海綿静脈洞と首の神経に転移したため、それぞれ照射しました。
 私は、放射線治療の副作用で痛みや吐き気を引き起こしやすく、過去の治療では何度も泣いて「もう嫌だ」と駄々をこねていたので、二度とやるつもりはありませんでした。でも「このまま放っておけば左腕がまひしてしまうし、腫瘍が大きくなって脊髄に入れば半身不随。手術は不可能」と説明を受け、決断しました。今までも治療していただいて先生の判断を信頼しているし、経験上、症状の軽いうちに治療に踏み切ることが大切だと思っていたからです。つらい副作用に備えて入院させていただくことにしました。

肩口まで固定された今回の放射線治療用マスク。記念にもらってきました


 それ以外にも恐怖の存在がありました。正確に照射するため頭部を固定するのに使う「シェル」という硬いマスクです。私は舌がないので唾液をうまくのみ込めないし、痰(たん)が絡んでも咳(せき)もできないほどガッチリ固定されるのは、本当に怖い。何かあったときのために緊急ブザーを手に握らされるのですが、何度経験しても慣れません。しかも今回は、一回あたりの照射量が多かったこともあって、マスクが肩まで押さえる形で一段と大きくなり、専用の枕まで用意され、口もまぶたも動かせない状態でした。
 恐怖の時間を乗り越え、病室に戻って二時間で吐き気が襲ってきましたが、早めに吐き気止めを飲んでおいたので、対処できました。照射した場所はむくみ、しばらくは治療前よりもしびれが強くなりましたが、狙った場所に届いたからでしょう。今は治まってきました。
 もう本当に「放射線治療はこれが最後」という思いを込めて、記念にマスクをいただいてきました。顔にはめる部分には、正しく照射するため、ほくろや気管切開の痕までしっかりマーキングされています。一緒につらい治療を乗り越えた相棒を連れて、退院しました。
 あらい・りな 1974年生まれ。岐阜県在住。2015年に腺様●胞(のうほう)がん(ACC)で舌を切除。闘病とリハビリを続けている。

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