【石川】薬 ラベルで個別認証 取り違えや不正流出防げ 

2020年11月24日 05時00分 (11月24日 10時52分更新)
2000品目もの薬を管理している金沢大病院の調剤室=金沢市宝町で

2000品目もの薬を管理している金沢大病院の調剤室=金沢市宝町で

  • 2000品目もの薬を管理している金沢大病院の調剤室=金沢市宝町で
  • 印刷面を接写するSAMPのカメラ(シヤチハタのホームページから引用)。この技術を薬の個別認証に応用させる

金大病院とシヤチハタ 印刷むら識別システム研究


 麻酔薬などの取り違えや不正流出を防ぐため、薬をラベルで個別認証するシステムを、金沢大病院(金沢市)と印章大手のシヤチハタ(名古屋市)が共同研究を進めている。ラベルの印刷むらを特殊なカメラで読み取り、ナノレベルで色の濃淡の違いを識別する。誤った薬の投与は患者の命に関わる事態を引き起こす可能性もあり、シヤチハタの特許技術で適正管理を目指す。 (堀井聡子)
 手のひらサイズのカメラで薬のラベルを接写すると、四ミリ四方にある数百カ所の色むらを、一秒足らずで判別できる。個別認証システム「SAMP(サンプ)」を開発した同社新規事業部の牧野智成部長は、「紙でも、直接印字された錠剤でも、大抵の印刷物は識別できる」と太鼓判を押す。
 個別認証には特殊なインクで印刷したり、後から識別コードを貼り付けたりする方法があるが、コストも時間もかかる。同社が着目したのは印刷物そのもの。「印刷むらは自然に出てしまう個性。人為的にまねできない」。約十年前から技術開発に取り組み、二〇一五年に特許を取得した。共同研究では約五年前から、麻酔や鎮痛剤に使われる医療用麻薬「フェンタニル」が、病院内のどこにあるか追跡する実証実験を行っている。
 事前に、薬液が入ったアンプル一本ごとにラベルの同じ位置を撮影し、それぞれのデータにIDを振って専用ソフトに登録する。薬を調剤室から出したり、病棟に持ち込んだりするたびにカメラでIDを読み取ることで、薬の移動経路や、どの病棟に何本あるかをパソコン上で可視化できる。読み取った人の名前もソフトに記録される。これまでの実験で薬三百本全てを判別できた。
 金沢大病院の崔(さい)吉道薬剤部長は「可視化することで悪用の抑止になる。全ての薬に対応できれば患者の安全につながり、薬の管理が大変な薬剤師のストレスも緩和される」と期待する。同病院では二千品目もの薬を扱う。似た名前や、同じ薬でも内容量が異なる物もあるため、処方箋と合っているか薬剤師が何度もチェックし、確認のはんこを押す。特に医療用麻薬は金庫に保管し、使用済み容器は回収して数を確認するなど、取り扱いに細心の注意を払っている。
 実用化の時期は未定だが、牧野部長は「責任の所在をはっきりさせる役割は印鑑もSAMPも同じ。SAMPが大型の印鑑のような存在になれば」と話した。

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