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挑む事業承継 技術は未来へ 加賀の製作所「新たな価値生む」

2020年11月22日 05時00分 (11月22日 11時18分更新)
IHIを早期退職して、新家製作所の社長に就いた山下公彦さん。「高い技術力を守り、新しい価値を生み出したい」と語る=石川県加賀市で

IHIを早期退職して、新家製作所の社長に就いた山下公彦さん。「高い技術力を守り、新しい価値を生み出したい」と語る=石川県加賀市で

  • IHIを早期退職して、新家製作所の社長に就いた山下公彦さん。「高い技術力を守り、新しい価値を生み出したい」と語る=石川県加賀市で

大企業管理職から町工場社長

 経営者の高齢化などで、事業の引き継ぎに悩む中小企業は多い。石川県加賀市の金属加工「新家製作所」もそうした町工場の一つだった。今年七月に社長に就いた山下公彦さん(56)=金沢市出身=は、総合重機大手IHI(東京都)を早期退職し、Uターン。親族や従業員でもない、個人による事業承継で経営を引き継いだ。「いい会社と人、技術を守り、新しい価値を生み出したい」と展望を描く。(小室亜希子)
 新家製作所は一九五六年に創業。産業用チェーンなど金属部品の加工や接合、塗装などに幅広く対応する。年間の売上高は六千万〜七千万円で、従業員は十二人。四十五年にわたり会社を率いた社長が昨年九月、七十九歳で亡くなった。親族や社内に経営に通じた人材はおらず、事業承継のマッチングをする石川県事業引継ぎ支援センター(金沢市)に親族が相談した。
 同じころ、IHIの管理職だった山下さんは会社の早期退職制度を利用し、後継者のいない中小企業の事業を引き継ごうと、東京で情報を集めていた。少し前に社内のライフプランセミナーを受け、この先の人生を考えたのがきっかけだった。金沢市内にいる高齢の両親も気掛かりだった。
 「趣味で残りの人生を過ごせるのか。東京と石川の二拠点生活になるなら、長く仕事ができて自由度のある経営者がいい」
 十一月にセンターに登録して間もなく、新家製作所を紹介された。工場を訪れてすぐ、技術力の高さは分かった。企業規模の違いはあれど、IHIと同じものづくり産業。航空機エンジンの製造や品質管理に携わってきた経験を生かせると考えた。センターの仲介で親族からの株式譲渡を進め、IHIを早期退職した翌月、社長に就任した。
 新しい職場では驚くほど多品種の注文に、二十〜七十代の従業員が短納期かつ低コストで対応している。そこに最近、自社製品の開発が加わった。「日本のものづくりを支えてきた中小企業を守ることの意味は大きい。会社を単に継続するのではなく、時代に合わせて続けられるようにしていくのが私の役割です」

石川県内、後継者不在率53%

 石川県事業引継ぎ支援センターの多田久俊チーフコーディネーター(63)は「雇用や技術力、地域の活気や絆の喪失など、廃業が及ぼす経済的、地域的なダメージは大きい」と指摘する。
 帝国データバンクの2019年調査によると、石川県内企業の後継者不在率は53.5%、富山県は60.4%(全国平均65.2%)。センターへの相談は年々増え、新型コロナウイルス禍による経営不振で今後さらに増加が見込まれる。山下さんのような親族、従業員以外の第三者承継は徐々に増えており、センターの引き継ぎ実績79件のうち32件を占める。
 多田さんは事業承継には2〜3年かかるのが通常とし、「経営者は早めに後継者選びに着手し、計画的に事業を引き継いでほしい」と呼び掛ける。

◇石川テレビであす夕方特集

 北陸中日新聞は石川テレビ放送と「守る」という言葉をもとに取材し、共同報道企画「守る」を連載しています。石川テレビの特集は23日午後6時9分からの「Live News イット!」で放送します。
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