国家の枠組み 超えた視点を 島館長×菊池裕子さん 金沢21美でトーク

2020年11月21日 05時00分 (11月21日 11時09分更新)
トランスナショナルな視点を持つ重要性を語る金沢美術工芸大の菊池裕子教授=金沢21世紀美術館で(ユーチューブの映像から)

トランスナショナルな視点を持つ重要性を語る金沢美術工芸大の菊池裕子教授=金沢21世紀美術館で(ユーチューブの映像から)

  • トランスナショナルな視点を持つ重要性を語る金沢美術工芸大の菊池裕子教授=金沢21世紀美術館で(ユーチューブの映像から)

◇工芸再考

 長くロンドン芸術大で教え、二〇一九年に金沢美術工芸大教授に就いた菊池裕子さん(工芸史)が十日、金沢21世紀美術館の島敦彦館長がゲストに聞くトークシリーズ「シマ缶とーく」に登場した。「工芸再考」をテーマにオンラインで話した菊池さんは、日本の近代工芸について、国家の枠組みを超えた「トランスナショナル」の視点から考える必要性を説いた。(松岡等)
 金沢美大に来ることを決めた理由の一つに国立工芸館の金沢移転があったという菊池さん。開館記念展を「工芸作品の長いタイトルに素材、道具、技術が詰まっていることを解体してみせたアプローチは非常に面白い」などと評価する一方、「比較の視点があっても良かった。他の国で素材とか風土とか技がどういうものか、相対化してみれば新しい見方が出てくる」と指摘した。
 また工芸館の今後のあり方について、「膨大な収蔵品を持つ英国ビクトリア・アンド・アルバート博物館では、どう新鮮に見せるかを考えて、若い人が来るようになった。必要なのはキュレーション(展覧会の企画)だが、ベースは研究。キュレーター(学芸員)が交代で一定期間、研究部門に行って現代の思想や批評を分かるようになり、コレクションが違って見えてきた。工芸館でもそんな環境をつくらなければ」と語り、金沢美大や21美などとの連携も提案した。
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 菊池さんは東京都出身。日米の大学で文学や美術史を学んだ後、英国で約三十年間活動。ロンドン芸術大では二〇〇五年にトランスナショナルアート研究所(TrAIN)を設立し、活動の拠点にしてきた。
 背景には、西洋を中心とする帝国主義や植民地主義に対する反省から生まれた「ポスト・コロニアル」や、文化を語ることで社会を分析する「カルチュラル・スタディーズ」など、一九九〇年代以降の思想の影響があった。英国の白人中心の美術史からこぼれ落ちた女性や旧植民地、有色人種による美術を考えるメンバーが集まったという。
 菊池さんはTrAINでのさまざまな活動を紹介。柳宗悦が提唱した民芸運動についても英文の自著で批判的に記し、「朝鮮や台湾、満州へと広がったが、朝鮮の場合は、柳が非常に人道的で愛情を持って保護をしたのだというような語り口しかないが、多角的な見方をしないといけない」と強調。日本でよく知られる英国の陶芸家バーナード・リーチのほかにインドや台湾にも民芸運動にかかわった重要な作家がいたことを指摘した。
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 トークの模様は、金沢21美のユーチューブ公式チャンネルで公開されている。

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