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工作作品 増える一方

2021年1月15日 11時54分 (1月15日 11時54分更新)
壁を生かして(岐阜県各務原市の女性提供)

壁を生かして(岐阜県各務原市の女性提供)

  • 壁を生かして(岐阜県各務原市の女性提供)
  • 靴箱の上にも(岐阜県各務原市の女性提供)
  • 名古屋芸術大の松実輝彦教授
保育園年中の娘は工作が好きで、作品や材料が居間の机や床にあふれています。夫が厳しく注意すると捨てることには同意しますが、悲しそうです。「捨てないで」とごみ袋から作った物を取り出すことも。娘の気持ちを大切にしながら、部屋をきれいに保つ方法はありますか。(愛知県、38歳)
◇こうしたら!
 保育園年中の娘の工作作品が居間にあふれ、捨てると悲しがる−。昨年十一月二十日付で紹介した愛知県の母親(38)が寄せた「娘の気持ちを大切にしながら部屋をきれいに保つには」という相談に、大きな反響があった。多かったのは「写真で残す」「飾る場所を作る」という意見だ。専門家は、こうした方法を通じて「作品、そして自分が認められたと思えることが大切」と話す。(吉田瑠里)
 「小学二年の息子も捨てるのを嫌がる」と書いてきたのは、岐阜県各務原市の女性(47)だ。女性は、作品を写真に撮って残すほか、展示する場を玄関の靴箱の上と、居間の壁に設けた。「飾っておくと、父親やお客さんが目を留めて褒めてくれるので、息子は満足している」。新しい作品を展示するときは「どれをどける?」と聞き、本人に決めさせて処分するという。
 浜松市浜北区の女性(46)も、高校生と中学生の娘たちが幼いころ、居間の一角を展示場所にした。飾り付けも任せたところ、楽しそうに取り組んだ。時間がたつにつれ、作品はのりがはがれるなどする。それを見た本人が「もういい」などと言って処分をしたという。「工作を続けて手先が器用になったおかげで、小学校入学後は図工で作品が表彰されたり、先生や友達に褒められたりして自信につながった。感性を大事にしてあげて」と助言する。
 スマートフォンで撮った写真を小冊子にし、郵便で届けてくれるというアプリを利用している人も。小学四年、一年生の二人を育てる愛知県江南市の女性(40)は、子どもが作品を持つ姿や、作品に名前と年齢を書いた紙を添えて撮影。このサービスを使って小冊子にしている。いつ作ったものかも分かり、いい思い出になるという。
 捨てるときの工夫をつづったのは、岐阜県可児市の女性(38)だ。小学一年の娘が気に入っている作品は、飾ったり写真を撮ったりして楽しんだ後、本人が納得した上で処分するが、その際は親子で「ありがとう、バイバイ」と言ってごみ袋に入れる。「子どもにとっては宝物。捨てるときも、気持ちを尊重したい」とまとめた。
 工作の材料が室内に散乱するのも、悩みの種だ。伸び伸びやらせたくても、つい「片付けなさい」と言ってしまいたくなる瞬間は、多くの親が経験しているはずだ。小学三年の娘がいる愛知県豊橋市の女性(39)は「意欲は大事にしたいが、居間に材料や作品を広げっぱなしだと落ち着かなかった」と振り返る。そこで、風呂敷などを敷き、その上で工作をするよう言った。
 寝る前など、作っている途中で片付けたいときは、そのままくるんで壁際に寄せれば気にならない。他の材料や道具と一緒に、風呂敷ごと段ボールに入れ、空いている部屋に置いておくこともある。「家族がくつろぐ居間を手軽に片付けられるなら、余裕を持って工作を見守れる」と勧める。

専門家に聞く 表現と鑑賞で感性耕す

 「表現と鑑賞は両輪」と話すのは、名古屋芸術大芸術学部教授の松実輝彦さん(55)=写真=だ。保育士や中学・高校の美術科の教員を目指す学生らを指導してきた立場から「特に幼児が自作を鑑賞することは大事」と説く。
 子どもが自分の作品に愛着を持ち始めるのは四歳ごろからだ。感情を色や形に表せるようになる時期で、感動した対象を実物より大きく描くなど気持ちを素直に表現するのが特徴。物語の世界に入り込んで作品をこしらえることも多い。「作品は、その時の魂をこめた、いわば『分身』。子どもは自作を見返すことで、作った時の気持ちを思い出す」
 だから「作品が増えて部屋が雑然とするから」といった理由で、すぐ捨ててしまうことは避けたい。写真を撮ったり、しばらく飾ったりしてほしいという。子どもにとって記録や展示は、作品の価値、ひいては自分自身が認められた証しになる。その上で「記録は残るから、この作品とはサヨナラして、また新しいのを作ってね」などとリクエストすれば納得するはずだ。
 幼児の造形を見るときは「うまい、下手でなく、作った時の心の動きが伝わってくるかどうかに目を向けて」と松実さん。「作品を通じて感性を耕すことが大事」と言い、「すてきだね。どんな気持ちで描いたの?」など、子どもと会話するよう勧める。作品の裏などに本人のコメントを書き留め、それも含めて記録すると、見返したときに感情がよみがえりやすい。
 十歳くらいまでは制作意欲が盛んで、家族に作品を見てほしい気持ちもある。しかし、その後は「上手に描けなくて恥ずかしい」などと感じる子が出てくる。「工作作品は一目で鑑賞でき、忙しい親でも話題にしやすい」と松実さん。「家に飾ることを子どもが喜ぶ間に、作品を通してコミュニケーションをとって」と呼び掛ける。

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