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『弓の矢も引かなければ飛びません…』新小結のころ故坂田藤十郎さんにもらった言葉は今でも忘れない【北の富士コラム】

2020年11月16日 21時26分

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翔猿(右)にはたき込みで敗れた貴景勝

翔猿(右)にはたき込みで敗れた貴景勝

◇16日 大相撲11月場所9日目(東京・両国国技館)
 今日も休みである。さすがに休みが3日も続くと心身ともどもにだらけてしまい、休養どころか逆に疲れてしまう。おまけにちょうどゴルフのマスターズが行われていたので、休みをいいことに3日間、徹夜で見てしまった。
 昔、ジャンボ尾崎選手の応援がてらオーガスタに行っているので、このトーナメントだけは必ず見てしまう。会場近くの民家を借りて、スタッフや友人たちと合宿である。私も腕を振るってちゃんこ鍋を作ったものだ。しかし、残念ながらあえなく予選落ちしたので私だけそのままハワイへ遊びに行ったのは懐かしい思い出だ。
 若い頃は私も元気があった。休みが取れると1人でハワイや韓国に遊びに行ったものだ。今では名古屋に行くのにも骨が折れる。名古屋といえば、今年は行けなくて残念だったが、クラブ「なつめ」は変わらず営業しているか気になります。
 なぜ「なつめ」の話をするかといえば、12日に歌舞伎の坂田藤十郎さんが亡くなったからです。2、3年前の名古屋場所の折、「なつめ」で藤十郎夫妻とお会いしています。当時、80歳を超えておられても実に艶々され、元気いっぱいでした。私は、藤十郎さんが孫のような芸妓(げいこ)さんとうわさになった時の、平然と笑い飛ばした豪快なお姿に大きな感銘を受けたものです。
 男はああなりたいものです。つくづく役者さんはいいなと思いました。それと、奥さまの立派なこと。カンラカラと高笑い。「芸人は遊ばなきゃ駄目です」「遊びは芸の肥やし」。私は今度生まれてきたら、絶対役者になろうと本気で思ったものです。
 実は藤十郎さんがまだ扇雀の頃、大阪場所の時に南新地の「六番」というステーキ屋でお会いしているのです。私が新小結の頃です。すでに負け越しが決定し、バーカウンターで一人やけ酒を飲んでいる時に、ちょうど店におられた扇雀さんから「弓の矢も引かなければ飛びません。今、関取は弓を引き絞っている時なんです。元気を出して頑張りなさい」と激励していただいたのです。
 今でもあの言葉は忘れてはいません。私の人生訓でもあります。新聞によりますと、藤十郎さんは安らかに大往生されたようです。心からご冥福をお祈りいたします。最期に「ヨーッ、山城屋」
 今夜は先約がありますので時間もありません。少しは相撲のことも書かなければいけません。今日は本当に熱戦が多く、全部書きたいぐらいですが、結びの貴景勝と翔猿の相撲を振り返ります。
 絶好調の貴景勝に対し、翔猿は闘志満々で真っ向勝負に出た。貴景勝は相手の動きを見るように初めは余裕を見せていたが、激しい翔猿の抵抗に、次第にむきになってしまった。押し負けを感じた貴景勝が反撃に転じたが、突きにばかり集中して足が出ていない。逆に翔猿の方が冷静に動きを読み取り、体を開いてはたくと貴景勝がばったり前に落ちてしまった。
 あっぱれ、翔猿。大殊勲である。これでがぜん、今場所も面白くなってきた。翔猿の男ぶりが一段と上がった一番である。もっとほめたいが、制限時間いっぱい。それでは行ってきます。(元横綱)
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