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『カフェイン失格』獣医師記者ならではの視点で考察 薬理作用と馬の気性から“八百長説”は根拠薄弱 

2020年11月13日 05時55分

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競走後検体からカフェインが検出されたソーヴァリアント

競走後検体からカフェインが検出されたソーヴァリアント

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 7日の東京競馬4R(2歳未勝利)で1位入線したソーヴァリアント(牡2歳、美浦・大竹)の競走後検体からカフェインが検出されたのは、非常に残念な事件だ。馬券の確定内容は変更されないが、同馬の同競走成績は一転「失格」。競馬法違反の疑いで、JRAは府中署に調査を依頼した。
 案の定、各種SNSなどネット上では根拠皆無の陰謀論がかまびすしい。極端な性悪説に立った謀略を想起すればきりがない。そうした立ち位置から客観的事実関係を明らかにするのは、当局の厳正な捜査が役割を果たしてくれるだろう。
 一方で、カフェインの薬理作用から考えて、少なくとも陣営が意図的にカフェインを投与した可能性は極めて小さいことは明らかだ。カフェインは中枢神経に作用して、興奮や覚醒を引き出す。仮におっとりして前進気勢が小さい馬に投与すれば、行きっぷりがよくなったりして成績が好転する可能性もあるだろう。
 ソーヴァリアントは、むしろ気性の不安定さが懸案となっていた。実際、デビュー戦も、結果1位入線した7日の競走も、ゲート内で落ち着かず出負け。興奮をいかに収めるかがテーマの馬に与えても、勝利に向けて得なことは皆無だ。
 もちろん、今回の失格処分は至極妥当なものだが、少なくとも、いわゆる八百長を疑ってかかるのは、動機において根拠が薄い。
 凱旋門賞の直前取消に関連しても当欄で述べたが、競馬先進国のこうした事例のほとんどは、どこかのタイミングで飼料などへの意図せぬ混入(コンタミ)が生じて起こる。14年の同種の事件も飼料添加物へのコンタミ。昨夏に大量取消が生じたいわゆる「グリーンカル事件」も、本質的には同種の事件だ。
 新規製品の導入の際には、サンプル調査で薬物混入の可能性を調べられるが、消費物である以上、全量調査は不可能だ。仮に飼料が原因だったケースは、かなり率の小さなジョーカーを引かされた不運と思うほかない。今回の原因は今のところ不明だが、関係者を気の毒に思いつつ、冷静に捜査進展を待ちたい。

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