<EYES> フォトジャーナリスト 安田菜津紀さん 「挑戦人」の国籍

2020年11月12日 05時00分 (11月12日 10時20分更新)

隆祥館書店主催のイベントで、パフォーマンスを披露するちゃんへん.さん

 10月17日、ジャグラーのちゃんへん.さんの著書「ぼくは挑戦人」刊行記念イベントが大阪市で開かれた。
 ちゃんへん.さんの家族は在日コリアンだ。朝鮮半島出身の人々は、日本の植民地時代には「日本人」とされていたものの、戦後には一方的に日本国籍を奪われ、特定の国籍を持たない「朝鮮人」として扱われた。さらに朝鮮半島は南北に引き裂かれ、1965年、日本は韓国とのみ国交を結んだ。その際に韓国籍を取得した人もいれば、「朝鮮人」「朝鮮籍」のままでいることを選んだ人たちもいた。
 ちゃんへん.さんは14歳の時、ジャグラーとして世界へと飛び出すため、韓国籍を取ろうとした。その時、祖母は目に涙をためてこう叫んだ。「おまえは南北分断を認めるのか! おまえは戦争という手段を使って一部の人間だけが幸せになろうとするやつらを認めるのか!」
 突き刺さる言葉だった。けれども祖父がちゃんへん.さんの背中を押した。国が分けられ、戦争が始まり、引き裂かれてしまった兄弟と再会したいという自分の夢はかなわないかもしれない。けれどもおまえの夢は国籍を取るだけでチャレンジできるじゃないか、と。
 朝鮮戦争は終わっていない。在日コリアンに対するヘイトも後を絶たない。この日、ちゃんへん.さんが語った家族の言葉は、どれも「過去」ではないのだ。
 <やすだ・なつき> 1987年神奈川県生まれ。NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)他。上智大学卒。TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

◆NPO法人Dialogue for Peopleのサイトはこちらから。

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