(62)「店頭販売」 「必要な人に届く」実感

2020年11月10日 05時00分 (11月10日 16時41分更新)
 嚥下(えんげ)障害の人にも使いやすいようにと、私が顧問を務める株式会社猫舌堂(大阪市)で開発した「イイサジー」ブランドのスプーンやフォークが、先月末から愛知県がんセンター内のローソンに置かれています。

愛知県がんセンター内のローソンに置いていただいた「イイサジー」のスプーンやフォーク


 この商品が、がん専門病院の売店に並ぶのは初めて。中部圏での店頭販売もここだけです。オンライン販売が中心ですが、実際に商品を見てから決めたいという声もいただいていたので、拠点ができたのはとてもうれしいです。
 販売初日、私も納品を兼ねて店頭に立ちました。猫舌堂の会員制交流サイト(SNS)のPRを見て来てくれた仲間、「高齢の両親のために」と買ってくださった方、「これなーに」と聞かれ商品の説明をするうちに関心を持って購入していただいたお客さまもいて、店頭販売の充実感を体験できました。
 昨年夏、猫舌堂が立ち上がる前、看護師でがん経験者の柴田敦巨(あつこ)さん(現・社長)と私は、がんセンターで活動する患者会「つばめの会」を訪ねました。摂食嚥下障害のある患者さんたちに試作品のモニターを務めていただき「もっと幅が狭いほうがいい」「柄の段差がないほうが持ちやすい」など具体的な意見を得て、手直しを重ねました。私も会のメンバーの一人として「使い心地」をとことん考えたし、柴田さんは「日本の職人さんに作ってもらうこと」にこだわって、洋食器づくりの伝統がある新潟県燕市の会社と打ち合わせを重ねました。
 そして、つばめの会に協力する看護師さん、歯科衛生士さん、栄養士さんら嚥下チームの推薦をいただいて、院内販売が実現しました。抗がん剤や放射線治療の影響で食事に苦労されることがあるのは、摂食嚥下障害が起こりやすい頭頸部(とうけいぶ)や消化器のがん患者さんだけではありません。軽くて小ぶりなスプーンやフォークが、さまざまな種類のがん患者さんの負担を少しでも減らしてくれればと思います。
 つばめの会は今、新型コロナの影響で活動を休止していますが、再開したら患者さんたちに「あのときいただいたご意見をもとに、こんな商品が完成しました」と報告したいです。そして他の病院や高齢者施設などでも関心を持っていただけるように、活動していきたいと思っています。
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 あらい・りな 1974年生まれ。岐阜県在住。2015年に腺様嚢胞(のうほう)がん(ACC)で舌を切除。闘病とリハビリを続けている。

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