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ノムさんとぼく。ユマキャンプでの思い出は

2019年4月19日 15時45分

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ユマキャンプでの野村監督(共同)

ユマキャンプでの野村監督(共同)

 私は意外と素直な人間である。このたび、30年以上、紙面で展開してきたアポなし外国人インタビュー「WHO ARE YOU?」を卒業、新コラムを始めるにあたり、後輩に謙虚に助言を求めた。すると、後輩は古い記憶を呼び起こすように遠い目になった。
 「先輩、覚えてますか?25年以上前のヤクルト春季キャンプ。確か、あの空の青さは、アリゾナ・ユマだったか。サッカー人気台頭で、プロ野球人気の陰りが叫ばれてたころです。監督ノムさんもプロ野球選手も芸能人、話題を提供しろと。おれは球界の広報担当だとか言って、連日、ボヤキ節をさく裂させてたんです。でも、例によって、しゃべりすぎた。ある記事をきっかけに、言った言わないになり、へそを曲げてしゃべらなくなった。で、報道陣と深い溝もできて、険悪ムードが漂い始めたある日、先輩がノムさんに放ったひと言を鮮明に覚えてるんです」
 ふーん、全く、覚えてないんですけどぅ。なんか言ったかい?
「イタズラっぽい笑みを浮かべながら、『監督ぅ、言ってることとやってること矛盾してませんかあ。おれは球界の広報担当とおっしゃったのは、どこのどなたでしかねー』と詰め寄ったんですよ」
名将ノムさんにそんなこと言った? 失礼なヤツだなあ。でも、いかにも、おれが言いそうなことだな。むふふふ。ノムさん、怒ったか?
「それが、芝居がかったしぐさで胸を押さえて、グサッと。『お、おまえ、痛いとこ突くな』と。先輩が、『監督のアキレス腱(けん)放しませんよー』って追い打ちかけると、ノムさんはニヤリとうれしそうなんです。無言の抵抗をしながら、実はしゃべりたくてウズウズしてたのか。しゃべるきっかけをつくってくれて、ホッとしてるような。ま、それをきっかけに、延々と果てることのない、エンドレスなノムさんの独演会がユマの空の下で再開されたんですけど…。ノムさんのシャイでおちゃめで人間くさい一面が出た光景が、どんな野村の名言より忘れられないんです」
 待てよ、待てよ、なんか、思い出してきたぞ。後輩が言ってくれなきゃ、ユマで起きた至極のエピソードをうっかり忘れるところだった。真実は、もったいぶって、ベールの向こうにあるのでなく、いつも、さりげなく、そこにあるんだな。肩肘張って土足で相手の心に入り込まなくても、なんの変哲もない、日常にこそあるんだな。この精神を肝に銘じて、固定観念や予定調和にとらわれない、生身の人間を書いていこうと思う―。
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