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【吉見一起・独占手記】一番上を見ちゃったから、ふがいない自分が許せなかった

2020年11月7日 06時00分

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1回表、最後の登板を終え、スタンドに手を振る中日・吉見

1回表、最後の登板を終え、スタンドに手を振る中日・吉見

◇6日 中日4―5ヤクルト(ナゴヤドーム)
 15年間の現役生活に幕を下ろした中日・吉見一起投手(36)が、ラスト登板となった6日のヤクルト戦後、中日スポーツに手記を寄せた。
 いやあ。やっぱり投げやすいなと。何とか外の出し入れができて、ヤクルトさんにも感謝です。体の状態がいいので「まだできるやん」とも思いましたけど、最後はこのドームで育ててもらって、いいことも悪いことも経験できたので、プレートをなでながら「ありがとう」と伝えました。2軍の若い子もみんなが通路で見送ってくれたのもうれしかった。最高の仲間と出会えました。
 正直、全く実感がないんです。会見したら湧くかなと思ったけど全くでした。準備は自分なりに一生懸命やってきたつもりなので、明日からそれをしない状態になったときに実感するのかなと思います。
 振り返ると、やっぱり苦しかった思い出の方が多いです。5年連続2桁勝利をしていたときは「僕の試合は落とせない」と言われていたので、しんどかったけど、やりがいがあった。でも、勝てなくなってからの苦しさは全く違う。特に今年は体調も状態もいいのに、思い描いているように進まなくてしんどかった。
 この世界は競争なので、結果を出せなければ投げるところがなくなるのは仕方ない。でも、僕は一番上を見ちゃっている。周りがエースと言ってくれて、大事な試合で投げる。その世界を見ちゃったので、現実を受け入れられない自分がいた。そこに行けないことは分かっているけど、もどかしくて、ふがいない自分が許せなくて。だんだん「辞めた方がいい。次のステップへ行きたい」という思いが大きくなって、決断しました。
 大事な試合で投げる。一番は中3日で臨んだ2011年のCSファイナル第5戦です。初戦に投げて勝って、2つ負けて、次は勝った。ロッカーで「次、誰投げるん?」という話になったんです。僕は中4日だと思っていたので「言われてない」と言っていて。その帰り道です。森さんから電話がかかってきたんです。
 「体どうなんだ」と聞かれて「大丈夫です」と答えたらこう言われました。「俺は明日勝ちたい。だからお前に託したい」。負けてもリーグ優勝のアドバンテージを含めて3勝3敗だけど、一気にいきたいと。そんなこと言われるのは一生に一度あるかないか。そんなに期待されているのかと思えて「いきます」と答えました。だからあの試合は期待に応えることしか考えてなかった。打者が誰であれ、どんなピンチであれ、抑える。そうなると一番強い。負ける気がしなかったです。
 今後は指導者を目指して野球を勉強することになります。伝えたいのは「絶対に隙を見せたらいけない」ということ。僕は落合さんから「5年連続2桁勝ったらエースと認めてやる」と言われて、それができたときに満足してしまったところがある。自信もつくし、周りもチヤホヤしてくれる。途中からは投げたら勝てる感じがして「すぐに100勝できるわ」とも思った。それが油断だったんです。でも満足したら一気に落ちる。発言や思考でも隙を見せたらいけないんです。
 僕はすごい球があるわけでもなく、ぱっと見は普通の投手。飛び抜けたものがなかったので、人の動きを見ました。敏感に常にアンテナを張っていたから洞察力や嗅覚を養っていけたのかなと思います。
 会見では後輩たちに「自分を知ってほしい」と言いましたけど、違う人を見ることで自分を発見できるし、力を伸ばせることもある。技術は人それぞれだけど、物事のとらえ方で変えられることがある。それを伝えていきたいです。
 最後にファンの皆さん、15年間、温かい声援ありがとうございました。(中日ドラゴンズ投手)

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