防災の新概念 緑のインフラに期待大

2020年11月7日 05時00分 (11月7日 05時01分更新)
 地震や台風、集中豪雨など日本列島を襲う災害は激甚化している。国は従来のインフラ一辺倒から、生態系が持つ多様な機能も地域の防災・減災施策に生かす考え方にかじを切りつつある。
 公園の芝生や大通りの街路樹、海岸沿いの松林や砂丘、山間部の森林…。豊かな自然は観光や癒やしだけでなく、防災・減災の役割も果たせるのではないか。社会活動に生かせる生態系の機能をコンクリートなど人工物による「グレーインフラ」に比し「グリーンインフラ(GI)」と呼ぶ。
 ゲリラ豪雨ではアスファルトから流れ込んだ雨水が時に下水能力を超えて氾濫する。昨年の台風19号で、栃木や群馬県などにまたがる渡良瀬遊水地は東京ドーム百三十個分(一億六千万立方メートル)の雨水を貯水し、下流の被害を軽減したとされる。名古屋都市センターの報告によれば、芝生は一平方メートルあたり二十リットルの貯水能力を備え、ビルの屋上緑化や校庭の芝生化も減災効果がある。森林は土石流、砂丘や海岸林は津波や高潮の威力を低減することで知られる。
 GIを取り込んだ地域開発や防災・減災は、欧米で二十年ほど前から広がったとされ、欧州委員会は二〇一三年に「GI戦略」を採択した。日本では一五年に閣議決定された国土形成計画や第四次社会資本整備重点計画にGIの概念が初登場する。
 防災・減災に限定したGIは「Eco(エコ)−DRR(Disaster Risk Reduction=災害リスク軽減)」と称される。高くなる一方の災害リスクに加え、わが国は少子高齢化や財政悪化、高度経済成長期に整備したインフラの集中的な老朽化などに直面している。東日本大震災ではグレーインフラの追求に限界があるとも思い知らされた。
 特定の目的や雇用の一時的創出に効果が高いグレーに比べ、グリーンは整備や維持管理が低コストで、平時にも便益がある。両者は優劣を競って、互いに取って代わるのではなく補完し合う関係にあり、日本にはなじみやすい考え方だろう。
 国土交通省は地域の防災・減災にGIの視点を取り込むため、本年度、自治体に専門家を派遣する事業を始めたが、緒に就いたばかり。現場で具体的な防災計画に落とし込む段階にはないようだ。その効果を数字で「見える化」し、まちづくりに幅広く戦略的に取り込むことを期待したい。

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