本文へ移動

ラグビーW杯 開幕戦勝利の日本に見えた危うさ 「オフロードパス」の功罪

2019年9月25日 19時00分

このエントリーをはてなブックマークに追加
日本対ロシア 前半、タックルを受けながら「オーバーパス」を出すラファエレ(左)。この後、松島のトライにつながった

日本対ロシア 前半、タックルを受けながら「オーバーパス」を出すラファエレ(左)。この後、松島のトライにつながった

 ラグビーW杯が開幕した。国の威信やチームの誇りをかけ、ただ勝利のために全力を尽くす戦いを目の前にして、つくづく思う。ゴールポストがもう少し高かったら当たって決まっていたかもしれないアルゼンチンの逆転ゴールキック、そして最適の位置を求めて8人、16足が1センチ単位で動かす日本のスクラム―。勝負は目に見えないわずかな差で決するのだ。
 日本はロシアとの開幕戦、序盤こそ苦しんだが、終わってみれば30―10の快勝。4トライのボーナス点も加算した。トライを演出したのは、タックルを受けながらボールをつなぐ「オフロードパス」。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)が就任当初から求めてきた技術の高いプレーで、味スタを埋めた4万5000人超を魅了した。
 ただ、もろ刃の剣だった。片手でも放つオフロードパスはその華やかさに目を奪われがちだが、試みようとして起きたノックオンなどのミスにも注視してほしい。エディー・ジョーンズ前HCは、原則、使用を禁じていた。
 ロシア戦。「(先制されても)焦りはなかった。自分たちがやるべきことをやれば、勝てると思っていた」とHO堀江が振り返るように、選手は直前の南アフリカ戦で受けたような圧力を感じていなかった。相手は格下。肉弾戦でも優位に進めていた。
 これが落とし穴となったように思う。ロシアにも意地、執念がある。目に見えない気持ちが全身に宿り、日本選手の手元を微妙に狂わせた。大一番は互いの気持ちが高ぶり、前のめりになる。技術よりも、激しいぶつかり合いの勝負がまず先にくる。力の差に関係なく、前半は往々にして接戦となるため、リスクを避けて、敵陣でのボールキープが定石だ。
 しかしわずかに生まれた心の余裕から、日本選手は序盤にオフロードパスを繰り返し、ミスを連発、攻撃権を相手に渡した。あの時間帯に求められたのは、オフロードパスを封印する勇気だった。難しいパスを使わずに我慢して攻撃を重ねていたら、両手で優しく放つパスでトライを取れていたと感じる。
 次のアイルランド戦。南ア戦と同じような圧力を受ける。だから、いい。簡単なパスはできない。余計なことに気が回らず、コーチ陣に示された戦術遂行に集中する。そして、突如出現した好機に使う無意識のオフロードパス。ジョセフ体制下で磨き上げた秘技はそこで生きるはずだ。 (末松茂永)

関連キーワード

PR情報

購読試読のご案内

プロ野球はもとより、メジャーリーグ、サッカー、格闘技のほかF1をはじめとするモータースポーツ情報がとくに充実。
芸能情報や社会面ニュースにも定評あり。

中スポ
東京中日スポーツ