中日・福敬登の涙にもらい泣き…“アツい男”はチームに貢献できるなら「キャッチャーだってやる」

2020年11月5日 12時03分

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昨年12月の「関東ドラゴンズファンフェスタ」で質問に答える福(中)と鈴木翔太(右)。左は小林正人広報(当時)=東京・赤坂で 

昨年12月の「関東ドラゴンズファンフェスタ」で質問に答える福(中)と鈴木翔太(右)。左は小林正人広報(当時)=東京・赤坂で 

  • 昨年12月の「関東ドラゴンズファンフェスタ」で質問に答える福(中)と鈴木翔太(右)。左は小林正人広報(当時)=東京・赤坂で 
[ヘンリー鈴木のスポーツ方丈記]
 年齢60歳。経年劣化と不摂生で体はガタガタ。こんな男に涙は似つかわしくないと思いながらも、私はテレビの前で泣いていました。4日のDeNA戦、1点リードの9回を締めた福敬登投手がグラウンドで泣き崩れた姿にでした。
 福投手との出会いは昨年12月4日、東京・赤坂のイベントバーで開催されたドラゴンズ応援イベント「関東ドラゴンズファンフェスタ2019~年末スペシャル」でした。鈴木翔太投手とともに名古屋からゲストとして駆けつけてくれた福投手とのトークショーに司会として参加した私は、その時の彼の言葉を今でも忘れません。
 「僕はとにかく試合に出たいんです。試合に使ってくれるなら、投手としてでなくても構わない。試合に出てチームに貢献したい」
 一途な思いに驚いた私が「今日の試合はキャッチャーをやってくれと監督から言われても、OKするのかい?」と投げ掛けても「もちろんです。キャッチャーだってやります」と即答で返ってくる。こんな選手、めったにいません。
 実はこの話、私が講師を務める専修大学で学生たちに話したことがあります。すると講義後に、学生からこのようなメールが送られてきました。
 「福投手は高校(神戸西高)の先輩です。会話をさせていただいたこともあります。いつも温和で優しいのに、そんなにアツイ人だとは知りませんでした。そういう部分はプロアスリートとして重要なことだと分かりました」
 私生活で後輩に対しても優しく接している。そういう男です。
 その福投手が、この10日間くらいは最大の試練に襲われた。10月25日のヤクルト戦から4試合連続失点で、31日の広島戦では1点リードの8回に登板して打者8人に4安打2四球6失点と崩れた。それでもファンからすれば、後半戦のドラゴンズを躍進させたのは間違いなく福投手です。僅差の試合を守り抜いてきた心身の疲労を心配する声こそあれ、責めるファンはいないはず。
 しかし責任感が強い福投手の心中は尋常ではなかった。それが試合後の涙となったのでしょう。
 そんな福投手を9回のマウンドに送り出した与田監督にも、相当の覚悟があったはず。試合後の与田監督の目はうるんでいました。涙があふれるのを必死にこらえていたと思います。与田監督が現役選手だった時、抑えで打たれても必ず次回に登板機会を与え、失敗をマウンドで取り返すチャンスをくれたのが恩師の星野仙一監督でした。福投手の気持ちは、わがことのように分かっていたでしょう。
 勝つことの素晴らしさと難しさ。それらが詰め込まれていたこの日の試合は、8年ぶりのAクラスに向けてだけではなく、来季にも必ずつながっていくと思います。
 そして、前述のイベントに参加してくれた鈴木翔投手。トークショーでは「2020年は結果が出なかったら引退する覚悟で臨む」と話していましたが、今月3日に他の6選手とともに来季の戦力外を通告されました。今年の沖縄2軍キャンプではキレのある速球を投げ、右手血行障害手術からの復活を予感していただけに残念です。現役続行が希望とのこと。新天地で活躍する姿が見られることを祈っています。
 ◆ヘンリー鈴木(鈴木遍理) 東京中日スポーツ報道部長、東京新聞運動部長などを経て現東京中日スポーツ編集委員。これまでドラゴンズ、東京ヤクルトスワローズ、大リーグ、名古屋グランパス、ゴルフ、五輪などを担当。
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