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異質ラバーのラケットを操る新星 卓球女子 出沢杏佳

2019年12月23日 18時00分

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Tリーグのデビュー戦を勝利で飾った出沢

Tリーグのデビュー戦を勝利で飾った出沢

 ラケットやバットなど道具を使うスポーツは、道具の性能の引き出し方を覚えると飛躍的にプレーが上達する。例えば、ゴルフ。「クラブにもっと仕事をさせなさい」。経験者なら1度は言われたことがあるだろう。力任せに振り回すスイングを直す決まり文句だ。また、クラブのシャフトを替えたら飛距離がぐっと伸びる一方で、正確性ががぐっと落ちることもあるので、アマチュアには悩ましい。
 そういった道具の機能性と技術を擦り合わせる妙味が最も詰まった競技といえば、卓球が真っ先に思い浮かぶ。ラケットに張るラバーを変えると、打ち方が変わってしまうほど道具の影響を受けやすい。
 その卓球のTリーグで、ラケットの両面に異質ラバーを張る変わり種の女子高生が登場した。トップ名古屋に所属する出沢杏佳、茨城・大成女子高に通う2年生だ。今月8日、愛知県武道館で行われた日本ペイント戦にデビュー。変化に富んだ球で格上の松平志穂を手玉に取り、3―0で快勝した。
 異質ラバーはつるっとした通常の表面とは異なり、粒々とした突起物が付いている。特徴としては相手の球の回転に対応しやすい半面、自ら回転をかけるのが難しいとされる。日本選手の使い手として有名なのは、東京五輪のシングルス出場を確実にした伊藤美誠だ。引退した福原愛さんもその一人で、特にカットマンに愛好者が多い。
 しかし、大半は片面に通常のラバーを張っている。出沢のように両面に異質ラバーを張るトップ選手はほとんどいない。強烈な回転を繰り出す選手がひしめくトップレベルでは、回転を自在に操れない異質ラバーだけでは勝てないというのが定説だ。いや、定説だったと言った方がいいかもしれない。4年ほど前に、球の材質がセルロイドからプラスチックに変更されてから異変が生じている。
 最近の伊藤は通常のラバーと遜色ない鋭い回転をかけ、「本当に異質ラバーなのか」とテレビの解説者をうならせている。男子でも、異質ラバーを片面に使う海外選手が4月の世界選手権で2位に入った。出沢も新星のごとく出現し、昨年度の全日本ジュニアを制している。ラバーの商品開発も加わり、異質ラバーの活躍の幅が広がっているのだ。
 出沢のラケットはフォア側に「表ソフト」、バック側に「粒高」と分類されるラバーを張る。
 「運動神経は元々よくないけど、ラバーのおかげで強い人たちと互角に戦えるのは楽しい。Tリーグで活躍し、いずれは海外で活躍できる選手になりたい」
 持ち合わせない身体能力を道具で補い、世界の舞台で戦う。そんな漫画のような夢物語が実際に紡がれている。走ったり、蹴ったり、投げたりするのが苦手でも、スポーツの好きな子どもはたくさんいる。大人も同様だ。運動神経の鈍い人たちの希望の星として、出沢には異質ラバーを操るパイオニアとして世界を渡り歩いてほしい。まだ高校生。可能性に満ちている。 (末松茂永)

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