Ante(石川県加賀市) 間伐材 山の恵み守る

2020年11月5日 05時00分 (11月5日 10時25分更新)
大釜で塩水を煮詰めるため、間伐材のまきをくべる従業員=石川県珠洲市で(Ante提供)

大釜で塩水を煮詰めるため、間伐材のまきをくべる従業員=石川県珠洲市で(Ante提供)

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揚げ浜塩などの食品開発


 豊かな能登の海から生まれる白い結晶、塩。石川県珠洲市の海岸で、日本最古の製塩法とされる能登伝統の「揚げ浜式」でつくる塩や食品を開発している「Ante(アンテ)」(同県加賀市)は、海水を煮詰める際に燃やすまき全てに、間伐材を使用している。「伝統の塩づくりを続けるには、海だけでなく山も必要」と、SDGsの目標(15)「陸の豊かさも守ろう」に取り組む。
 国内の製塩業界では化石燃料の使用が主流だ。取り壊した木造家屋から出る廃材を使う業者もいるが、Anteは能登の間伐材を地元の森林組合から原木で買い取り、わざわざ従業員がチェーンソーで切り分けている。一年で使うまきは三十〜四十トン。「廃材よりもコストは高い」と同社製塩事業部の西花優希マネジャー(27)は明かす。
 それでも間伐材を使うのは、二酸化炭素(CO2)の実質排出量をゼロにする「カーボン・ニュートラル」を目指しているからだ。まきに使うコナラは、樹齢二十年ほどの若い木なら伐採した後、切り株から芽が出てくる。「更新伐」と呼ばれる伐採方法で、ただ間引くだけでなく次の世代を育てることにつながる。これなら木を燃やして排出した分のCO2を次の木が吸収し、排出量が相殺される。
 中巳出理(なかみでり)社長(73)は「海だけでなく、燃料の木が採れる山がなければ昔から塩はつくれなかった。海と山の資源を生かし、その恵みを守って商品にしている」と塩に込めた思いを語る。
 製造工程では、浜辺の塩田に海水をまき、砂を乾燥させる。塩の結晶が付着した砂を集め、その上から海水を注いでためた濃い塩水を、直径一・八メートルの大釜で二回煮詰める。一回目に煮詰める時間は六〜八時間、二回目は一日半かけてじっくり炊き上げる手間のかかる作業だ。
 塩田に海水をまく前には、フィルターに通して海洋プラスチックを除去する工程も挟んでいる。西花マネジャーは「食の安心安全のため、プラスチックの除去に取り組む塩を選ぶ飲食関係者も出てきた」と言う。
 中巳出社長は、揚げ浜式という形式を守ること自体が、伝統を守ることではないと言う。「自然の恵みを生かすという伝統の神髄を守ることこそが大切。その原点を忘れずに取り組み続けたい」 (堀井聡子)

会社メモ 2009年創業。金沢市湯涌地区のユズを使った「金沢湯涌サイダー 柚子(ゆず)乙女」など、地域の農産物を使った商品開発を手掛ける。14年、石川県珠洲市で揚げ浜塩を使ったメニューを提供する「しお・CAFE」を開店。17年に製塩事業に着手し、塩ブランド「DENEN(デンエン)」を立ち上げた。従業員は20人。

SDGs 「誰一人取り残さない」という考え方のもと、人種や性別、地域などを超えて地球上のみんながそろって幸せになることを目指す国連の目標。「貧困をなくそう」「すべての人に健康と福祉を」「人や国の不平等をなくそう」など17のテーマ別の目標がある。SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略。


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