本文へ移動

<by高校生スタッフ> スプツニ子!さんに聞くジェンダー問題

2020年11月4日 05時00分 (11月4日 10時56分更新)
スプツニ子!さん

スプツニ子!さん

  • スプツニ子!さん
 自作の音楽や作品を通じて、テクノロジーがもたらす社会への影響を考察する、東京芸術大准教授でアーティストのスプツニ子!さん(35)。性別の枠にとらわれず、自由に生きるには−。日本社会にはびこる、女性への固定観念に戸惑いを感じ始めた高校生スタッフが、オンライン取材で悩みをぶつけた。 (構成・福沢英里)
 東京書籍は八月に「世界は女性が変えてきた 夢をつないだ84人の勇者たち」(ケイト・ホッジス著)を出版。この日本版特別付録に収録されたスプツニ子!さんのインタビューに高校生スタッフが関心を持ち、今回の取材が実現した。同書はアートや科学、政治や医療など各分野の女性先駆者が登場する。事前に読んで臨んだ山地美潤(みうる)さんは英国初の女性医師エリザベス・ギャレットアンダーソンの名を挙げた。他分野で活躍する女性たちと協力して女性の地位向上に尽くした点に共感したからだ。
 スプツニ子!さんは、全米各地でデモが起き、大統領選の争点にもなった人種差別の問題などを例に「一人でできることには限界がある。世の中の仕組みを変えるには、連帯することがプラスに働く」と応じた。
 ジェンダーへの問題意識はどこから生まれたの? 話題が生い立ちに移ると、数学者の英国人の母親から「女だからできないとか、女のくせに、といった言葉には耳を貸さないで」と背中を押されたことを紹介。自身も数学とプログラミングが好きで、高校三年を飛び級して英国の理系名門大学で学んだ。
 一方、生まれ育った日本で見たバラエティー番組では「結婚できない女性は負け犬」などと、まるで女性は自立してはいけないかのように描かれていた。このギャップに違和感は深まるばかり。
 日英の違いで一例として挙げたのが、生理痛治療などに使われる低用量ピル承認の歴史。欧米では一九六〇年代に承認された一方、日本は国連加盟国では最も遅い九九年だった。その結果、国内のピル普及率は3%と低く、「女性だから痛いのは当たり前。ピルに頼っちゃいけない」と考える人はいまだにいる。
 高校時代、「人は宇宙に行き、人工知能もつくり、ゲノム(全遺伝情報)を編集している時代なのに、なぜ私は毎月、生理になっているのか」と考えていた。調べてみると、研究や政策決定の場に女性が少ないと気付き、「テクノロジーや科学を通じて女性が生きやすい社会を実現したい」と思うようになったという。
 堀詩(うた)さんが生理痛があっても「一日ぐらい我慢しなよ」と周囲に言われた経験を明かすと、最近では日本でも「フェムテック」が注目されていることを紹介。女性が抱える健康上の課題や悩みをテクノロジーで解決しようとする製品やサービスのことだ。
 「女性はこうあるべきだ」と周囲に言われる固定観念をどう壊していくのか。早稲田彩乃さんの問いにスプツニ子!さんが勧めたのは、海外旅行や外国語を学ぶこと。「異文化に身を置けば、予想もしない違いや違和感に気付く。変えられる余地や他の方法があるのではと物差しが変わり、自分の固定観念がなくなっていく」とエールを送った。

参加した高校生スタッフの感想

 山地美潤(高1・名古屋市瑞穂区) 女性の声を政治に反映できていないと思った。「生理、出産のつらさを耐えるのが当たり前だと日本の女性が思い込んでいることに問題がある」という言葉にも共感。もっとテクノロジーを駆使して、女性が生きやすい世界をつくる必要性を感じた。女性の多様な人生や生きやすさのため、未来をつくる私たち高校生が、彼女の話を聞けて誇らしく思う。本で紹介された、世界を変えてきた女性たちのように、自分なりにできる行動をしたい。
 早稲田彩乃(高1・愛知県尾張旭市) 「物差しを変えていかなければいけない」。最も印象的な言葉の一つだ。時代や立場で違いが生まれるこの物差しは、時に固定観念として根付くと気づいた。固定観念にとらわれないために、異文化に身を置くとよいと聞き、海外で学びたいという気持ちが強まった。また、テクノロジーが進歩しても、女性が生理や出産に苦しむことに女性自身が疑問を抱かないと知り、問題提起の必要があると感じた。
 堀詩(高2・名古屋市熱田区) 低用量ピルの話を知り、現代の日本社会に憤りを覚えた。生理や出産など女性が担わなければいけない課題を「女性なら当然のこと」として片付けてしまうのはおかしい。こうした問題を超えていくために、女性が勇気を持って立ち上がることが最初の一歩になると思う。話の中で出た「スペキュラティブデザイン(社会問題を提起して議論のきっかけとするデザイン)」や「フェムテック」についてもっと理解を深め、未来を変える女性の1人になりたい。

 すぷつにこ 1985年、東京生まれ。母が英国人、父が日本人。本名は尾崎優美(ひろみ)。中高はインターナショナルスクールへ。英国の大学を卒業後、英国王立芸術学院でデザインを学ぶ。卒業制作「生理マシーン」がニューヨーク近代美術館に展示されるなど話題に。2013年、マサチューセッツ工科大のメディアラボ助教に就任。東京大生産技術研究所特任准教授を経て、現職。17年、世界経済フォーラムが選ぶ若手リーダー代表に。著書に「はみだす力」。


関連キーワード

おすすめ情報

学ぶの新着

記事一覧