中日春秋

2020年10月31日 05時00分 (10月31日 05時00分更新)
 仕事の失敗や不手際に対する客側の言動がとげとげしさを増していて、社会問題にもなっているという。そんななかで温かみを感じるニュースがあった。<74歳差文通「いいね」>と見出しにある。東北地方で発行する河北新報の記事である。会員制交流サイト(SNS)で、ひとしきり話題になっていた話らしい
▼記事によると、宮城県栗原市の九十一歳の女性宅に先日、いつもと違う朝刊が届いた。誤配である。販売店に連絡せずに、そのまま読んだのは、新聞少年が学校に遅れてはいけないと案じたからだそうだ
▼紙面には、地元出身の脚本家、宮藤官九郎さんの母が、帰省できない孫について書いた投稿が載っていた。女性は、いいものが読めたお礼を手紙にし、図書券を同封して翌朝、渡したそうだ
▼「朝起きはさぞや辛(つら)いでしょうが安全運転で頑張ってね…あなたが届けて下さる新聞を読むのが日課のひとつです」。SNSにある情報によれば、そんな言葉も書かれていたそうだ。新聞少年は高校二年生。お礼の手紙を朝刊にそえた。今も文通が続くそうだ
▼十八日は「新聞配達の日・新聞少年の日」だった。二人の出会いに新聞がかかわっていることが手前みそながら、新聞にかかわる者として少しほこらしくもある
▼一見、失敗にみえる出来事に人の優しさが隠れていることがある。そう教えている話のようでもある。

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