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「耳は口ほどに…」耳の“表情”が豊かだったスカーレットカラーの調教 物見しても能力は出し切れる【天皇賞・秋】

2020年10月30日 08時20分

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運動するスカーレットカラー

運動するスカーレットカラー

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 競走馬が物見をする、というのは気性的な部分の負のファクターとして理解されることが多い。草食獣である馬は、ルーツ的には被捕食者。周囲への警戒心が強く、本来的に臆病だ。競走中も例えば、馬込みにひるんでせっかく開いた進路に突っ込めなかったり、後ろからの蹄音(ていおん)に驚いて萎縮したり。しばしば、加速をそぐことにつながる。
 一方で、物見をすること自体は、運動器の性能とは直接関係ない。しっかりコントロールできる馬であれば、物見をしていてもフィジカルな能力を出し切るということもまた、しばしばある。天皇賞・秋で波乱の目に期待するスカーレットカラーは、そうした様子を観察しやすい馬だ。
 馬が危険を察知しようとするアンテナは、視覚より聴覚の方が優先度が高い。再三当欄でも紹介してきたが、馬においては「目は口ほどに~」ならぬ「耳は口ほどに物を言う」だ。28日栗東CWで併せ馬を行って突き抜けた同馬は耳を覆ったメンコごしに分かるほど、耳の“表情”が豊かだった。
 4角あたりまで、他厩舎の単走の馬がインに取り付いていたが、右耳で、その招かれざる“併走馬”の位置を探りつつ走っている。直線はしっかり耳を絞って加速したが、入線後に流すと少しキョロキョロ。周囲の状況把握に余念がない。
 鞍上によるコントロールが十分利いている状態で、なお物見ができるのは、体にかけられている運動負荷が精神的余裕を奪うレベルを下回っているからだ。人のマラソン競走では、ゴール直後に倒れこみ、関係者が駆け寄っても満足に反応できない選手がしばしばいる。全力を出し切った証左だけに悪いことではないとは思う。
 一方で、笑顔でゴールしメダルを獲得、テレビカメラに気の利いたコメントまで口に出来る選手もいる。条件・結果が同じだった際、フィジカルな能力においてどちらが優れた選手なのかは明らかだろう。
 管理する高橋亮師も「物見するのは、この馬にとっては調子のバロメータだね」と話す。追ってなお物見できる競走馬は、後者になぞらえられる優駿だと言える。

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