中日春秋

2020年10月30日 05時00分 (10月30日 05時01分更新)
 二〇〇二年元日の新聞に載り話題になった広告を思い出す。一ページのほとんどを“余白”が占める、あまり見たことのないつくりに、小さく自由の女神像と「ニューヨークへ、行こう。」の文字。三カ月余り前に米中枢同時テロが起きたばかりだった
▼広告主は渡航自粛の機運などで打撃を受けていた全日本空輸である。別の観光地でなく、あえてニューヨークに目を向けた広告制作者の提案を受け入れたという。見た人の心に、米国の市民を励まそう、日本からも激励を−と響いたようだ。その年の新聞広告賞を受けている。自由で新しい物事に挑戦的な社風も思わせる広告であろうか
▼今回の危機に、他者を励ます余裕はないようである。ニューヨークはおろか、国内の移動もままならない新型コロナウイルスによる航空需要の減少で、過去最悪の打撃を受けてしまった
▼全日空を傘下におくANAホールディングスは、実に五千百億円という赤字の見通しを明らかにした。大型機の導入など、拡大路線もあだになったという
▼航空需要の低迷は、まだ続くという判断から、路線の縮小を含め、たいへんな改革を視野に入れているようだ
▼大きな影響が、地方や関連する産業に及ぶ恐れがあるだろう。国をバックに持たず、開拓者の精神を誇りにした企業である。挑戦する気風を糧にして、また立ち上がってもらわねばならない。

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