<ユースク>キャッシュレス普及に中小店悲鳴 増す手数料、利益圧迫

2020年10月29日 05時00分 (10月29日 05時01分更新)
小規模店舗の利益を圧迫するキャッシュレス決済=名古屋市内の焼き肉店で(野村和宏撮影、一部画像処理)

小規模店舗の利益を圧迫するキャッシュレス決済=名古屋市内の焼き肉店で(野村和宏撮影、一部画像処理)

  • 小規模店舗の利益を圧迫するキャッシュレス決済=名古屋市内の焼き肉店で(野村和宏撮影、一部画像処理)
 「キャッシュレス決済が増えて経営が大変なんです」。名古屋市内で焼き肉店を営む六十歳の男性店主から、中日新聞「Your Scoop〜みんなの取材班」(ユースク)に悲鳴にも似た声が寄せられた。店主に話を聞くと、政府が普及を進めるキャッシュレス化が中小店舗の体力を削りかねない現状が見えてきた。 (石井宏樹)
 この焼き肉店の毎年の売り上げは三千万円ほど。従来、売り上げのうち三割ぐらいがキャッシュレス決済だった。しかし、昨年十月の消費税増税に合わせ、政府はポイント還元などキャッシュレス決済を強力に後押し。さらに新型コロナウイルスの感染拡大で、現金を触らない支払い手段としても推奨され、わずか一年でキャッシュレス決済が全体の七割と、現金を逆転したという。
 店が決済代行会社に支払う加盟店手数料は売り上げの3・5%。クレジットカードや複数の電子マネーが使え、タブレット端末で管理できる。消費税増税前の手数料は年間の合計で約三十万円だったが、同じ売り上げなら計算上、二倍強に膨れ上がる。仕入れやアルバイトの給料、店舗の賃料などを除くと年間利益が「三百万円弱」という店にとって決して小さくない数字だ。
 一般にキャッシュレス決済の利点として、現金管理の手間の削減が挙げられるが、店主によると、人数は減っても現金払いのお客さんのために釣り銭の準備などは必要で「メリットは感じられない」と話す。
 売り上げそのものもコロナ禍で激減し、政府や県の補助金で何とか店を維持している状態。店主は「お客さんの便利さはよく分かる。しかし、小さな店舗にとってキャッシュレス決済が普及すればするほど地獄」と語った。
 旗振り役の政府は、ポイント還元キャンペーンの際、手数料率の上限を3・25%とするよう参加業者に求めた。従来の5〜7%より大幅に低く、半数以上の業者はキャンペーン終了後もこの料率を維持しているという。経済産業省の担当者は「一定の引き下げ効果があった」と胸を張るが、海外では手数料率が比較的高いとされるクレジットカードでも、中国で最大0・55%、米国で1〜3%程度とされ、依然、日本は割高感がある。
 政府は現在20%台のキャッシュレス決済比率を、二〇二五年半ばに四割まで高める考え。店主は「キャッシュレス化でカード業界の売り上げは拡大しているはず。携帯電話料金のように引き下げの議論が出てきてもいいのでは」とこぼした。

 キャッシュレス決済 デジタルデータでお金をやりとりする決済方法。主にクレジットカードや電子マネー、QRコードを使って支払う。店舗の省力化、購買データの利活用に加え、新型コロナウイルスの感染拡大で現金をやりとりしない衛生面でのメリットも注目されている。2019年10月の消費税増税に伴う消費の変動緩和措置として、政府は20年6月まで対象店舗でのキャッシュレス決済に対して最大5%のポイント還元を行い、キャッシュレス化が加速した。


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