中日春秋

2020年10月29日 05時00分 (10月29日 05時00分更新)
 月の光にぬれるという表現がある。十五夜は過ぎたけれど、今の月も草木をぬらす明るさをたたえているようである。その本体には、まるで水気を感じないお月さまであるが、海や湖に入り江と水の星を思わせる地名を先人はつけている
▼<月面に静かな海のあるといふとこしへに波知らぬわたつみ>。歌人喜多昭夫さんの一首を、科学にちなむ歌を収めた松村由利子著『31文字のなかの科学』で知った。たしかに、波を知らない海神(わたつみ)の海だろう。「静かの海」は、餅をつくウサギの顔のあたりである
▼本当に水のある「海」なのかもしれないという話のようだ。月には考えられているより多くの水が存在していて、日の当たる場所にも分布していると米航空宇宙局(NASA)などが発表した
▼飲むだけでなく、水はロケットの燃料にも活用できる。採取が可能となれば、米国や中国が有人探査を目指す中、きわめて重要な資源となる
▼夢が広がる話ではあるが、資源のある所、奪い合いが起きるのが、人の世の常である。以前から水などの争奪戦が起きると懸念が膨らんでいた。「アルテミス合意」という国際的な取り決めに先日、日米などが署名している。平和利用を目指してという。ただ、そこに中国などは入っていない
▼月には、「静かの海」や「賢者の海」があれば、「危機の海」もある。岐路かもしれない。

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