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<#不登校> 「特例校」どんな場所?

2020年10月29日 05時00分 (10月29日 05時00分更新)
「ウイング」の仕組みを説明する谷口校長。校舎内には木がふんだんに使われている=京都市中京区の洛風中学校で

「ウイング」の仕組みを説明する谷口校長。校舎内には木がふんだんに使われている=京都市中京区の洛風中学校で

  • 「ウイング」の仕組みを説明する谷口校長。校舎内には木がふんだんに使われている=京都市中京区の洛風中学校で
 昨年度の不登校の児童生徒が全国で約十八万人と過去最多を更新する中、不登校の生徒を対象にした「岐阜市立草潤(そうじゅん)中学校」が来年四月に開校する。中部地方では初めての公立の不登校特例校だ。一度は学校に通うのをやめた生徒を迎え入れる特例校とは、どんな場所なのか。開校して十六年がたつ京都市立洛風(らくふう)中学校を訪ねた。 (形田怜央菜)
 十月上旬の金曜日。三年生の体育は、決まった時間内で20メートル走を繰り返すシャトルラン。走る前に教員に「自分のペースでいいからね」と声を掛けられた女子生徒がうなずく。限界を感じた時点で離脱するルール。最後の一人になった生徒が走り終えると、他の生徒らから「お疲れ」の言葉と温かい拍手が送られた。
 二年生の国語では歌人与謝野晶子の短歌を学んでいた。質問に対する挙手が少ないと見るや、教員は生徒の席に近づき、優しく問いかける。内容に戸惑う生徒がいると、後方にいた別の教員が手助けしていた。授業は必ず教員二人以上で行う仕組みだ。
 「仲間との関わりのために学校はある」。谷口妃都美(ひとみ)校長(59)が力を込める。人間関係や発達特性など悩みはそれぞれだが、人との関わりが苦手な生徒は多い。教員らが積極的に生徒へ声を掛け、同世代で「つながり」をつくれるよう後押ししているという。
 現在、全校生徒は四十三人。基本的な授業は学年ごとに行う一方、学年を超えた交流を促す仕組みが「ウイング」と呼ぶ学年縦割りのクラス編成だ。四つの各ウイングに教員が三人おり、生徒は相談しやすい大人も見つけやすい。
 ウイングでは一日の始まりと終わりにホームルームを行い、昼食も一緒に食べる。職人を招いて伝統工芸体験をしたり、博物館の学芸員の講義を聴いたりする活動もある。
 通常の人事異動で配属される教職員らは、元々不登校に特化した知識があるわけではない。専門家の意見を仰ぎ、毎日情報を共有し、授業案や個別の支援策を積み重ねてきた。ただ、洛風中に転入学しながら再び不登校傾向になる生徒もいる。毎日登校が原則だが、谷口校長は「決して無理に来させようとはせず、その子の状態に応じた策を考える」と話す。教員が電話や自宅訪問を繰り返し、生徒と会話を続けるといった具合だ。
 不登校の児童生徒は増え続け、特例校に対する期待と関心は高まっている。谷口校長は「ここで自分の心を穏やかに保つ方法を身に付けて卒業してほしい」と願っている。
 

 京都市立洛風中学校 2004年10月、構造改革特区を利用して京都市中京区に開校。市全域から毎年40人前後の生徒を受け入れる。4月と9月に体験入学を行うため、転入学の時期は原則5月と10月。現在は1年5人、2年13人、3年25人。年間授業時間は一般校の4分の3。教職員約20人のほか、スクールカウンセラー3人、スクールソーシャルワーカー1人、総合育成支援員1人、学生ボランティア10人。


卒業生の教員「寄り添いたい」

 洛風中学校卒業生の細井裕介さん(31)は現在、京都市内の公立小学校で教員として働く。
 最初の中学校の一年二学期ごろから不登校になり洛風中に転学。「周囲の目を気にしすぎていたが、先生や仲間同士で互いに認め合う雰囲気が心地良く、自分らしく過ごせるようになった」と振り返る。私立の全日制高校に進み、大学で教職課程を選択。教職大学院でも学んだ。
 不登校になった当時は、その理由を「何となく」としか表現できなかったが、大人になった今は「中学へ進学して周囲の人数が急激に増え、集団生活になじめなかった」と説明できる。
 自分にとって学校はもともと好きな場所。教員として「自分に似た子どもがいたら寄り添いたい」と生徒を思いやる。

#わたしの体験談 −名古屋市の女子生徒(12)

 ▽不登校はいつから、どうして? 小学1年生のころから休みがちになりました。「ハズレ」の先生だったというか、相性が悪かったんだと思います。締め付けが多くて窮屈で。それに友だちが怒られていたりすると、私の方が泣きそうになったり。それがつらくて「行きたくないな」となり、母も理解してくれました。でも、遠足とか野外学習とか修学旅行とか、イベントは誘われて行ってみたら楽しめたし、演劇が好きなので学芸会も出ました。
 ▽今は? 中学入学のタイミングでまた学校というものに通ってみたくなりました。やっぱり同世代としゃべったり遊んだりしたい。でも普通の中学は息苦しいし、勉強も追いついていない。それで母が私立の不登校特例校も含めて探してくれて、体験入学もしました。その結果、片道2時間かけてオルタナティブスクールに通っています。地元の中学にも籍はあるけど、一度あいさつに行っただけ。1年生の間は行かないかな。勉強は、高校に行きたくなったりとか、自分が必要性を感じたタイミングでいいかなと思います。
 ▽世の中や学校に言いたいこと もっと個人個人の意見を取り入れて、縛りが少しでも減ってほしい。
  ◇
 あなたの不登校体験、今どうしているか、世の中や学校にぶつけたい思いを教えてください。
 中日新聞教育報道部
 kyoiku@chunichi.co.jp
 

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