本文へ移動

【石川】クマ情報自治体間の壁 白山市出没 隣接・川北に連絡なし   

2020年10月28日 05時00分 (10月28日 09時10分更新)
石川県小松市の公式LINE(ライン)。地図付きで目撃場所を知らせている

石川県小松市の公式LINE(ライン)。地図付きで目撃場所を知らせている

  • 石川県小松市の公式LINE(ライン)。地図付きで目撃場所を知らせている

識者「災害と見なし対応を」


 金沢市以南の自治体でクマによる人的被害が増えている。クマは市町の境界にかかわらず移動するため、自治体間や住民との情報共有が十分でなければならないが、住民への目撃情報の発信基準などには自治体間でばらつきがある。明治大危機管理研究センターの市川宏雄所長は「危機管理にやり過ぎはない。クマの被害を災害と捉え、市町が共有した情報は素早く住民に伝える連携が必要」と指摘する。 (都沙羅、長屋文太)
 石川県白山市明法島(みょうほうじま)町で十六日に男女四人が襲われた。最初の被害が確認されたのは午後零時十分ごろ。白山市は十五分後に市民に防災メールなどで注意を喚起した。現場から六百メートル南の川北町が、住民に向けて防災無線で周知したのは約二時間後の午後二時半ごろだった。町によると、午後一時ごろ、町民が白山市の出没情報を入手し、学校を通じて町に連絡があり、白山市に問い合わせた。
 各市町は、クマが隣接自治体に移動する可能性があると、実務的に相互に連絡を取り合っている。だが、「広域連携のルールはない」(川北町)。さらに、隣接自治体での出没情報を、住民に発信する明確な決まりもない。クマが出没した場所の近くに住んでいても、自治体が違うと遅くなったり、伝わらなかったりする恐れがある。
 住民への情報発信自体にも違いがある。目撃件数が県内最多の小松市は防災無線のほか、市公式LINE(ライン)で市民からの情報を地図付きで発信。担当課を超えた職員五人体制の五班が、交代で二十四時間通報を受け付けている。担当者は「被害を防ぐには迅速な発信が大事」と話す。
 金沢、白山、加賀の三市は無線と市民向けの防災メール。金沢市は「目撃情報があればすぐに」、白山、加賀両市は「市街地に出没し、緊急性が高いと判断すれば」との条件だったが、人身被害や商業施設への侵入があった加賀市は二十一日から、目撃情報が入った時点でメールを送信するようにし、市公式フェイスブックでも周知を始めた。
 情報発信は通報に頼る部分が大きいが、白山麓に住む農業の男性(84)は「クマは怖いが、よく出るから『またか』という感じ。通報はしない」と、地域で温度差もあるのが実情だ。
 秋田県鹿角(かづの)市では、住民の警戒意識を高めて対策を進める。二〇一六年、クマによる人的被害や農作物の食害が深刻化。山間部ではクマに慣れた住民も多いが、人命に関わるとして情報発信を強化した。同市担当者は「出たかも、という情報でも発信の条件にした」とし、被害は減少傾向だ。
 今秋のクマの例年にない出没に対し、市川所長は災害と見なした対応を求め、「自治体は、出没場所や危険度など市町を超えて詳しく発信すべきだ」と警鐘を鳴らす。

関連キーワード

おすすめ情報

北陸発の新着

記事一覧