53歳・白石がアジア勢初完走へ挑む! 単独無寄港無補給の世界一周レース「ヴァンデ・グローブ」

2020年10月28日 06時00分

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新艇でトレーニングをする白石康次郎(C)Thomas Dereigneaux

 海洋冒険家の白石康次郎(53)=DMG MORI SAILING TEAM=が、11月8日にスタートする単独無寄港無補給の世界一周レース「ヴァンデ・グローブ」に挑む。2度目の挑戦でアジア勢初となる「完走」を目標に掲げる。サッカー元日本代表の三浦知良(横浜FC)と同じ53歳。枯れぬ好奇心を持つセーラーに、世界一過酷とも言われるレースに臨む心境を聞いた。
  たった1人で、港に寄らず、食料もヨットに積んだものだけ。動力は風のみ。世界一過酷とも言われるレース。それに加え、技術革新によって高速レースになり、まさに海上のF1と化した。さすがの白石も苦笑して言った。
 「もう飛行機みたい。今回は船に羽が付いていて、トビウオみたい。スピードも20~30ノット(時速37~55キロ)出る。予選レースでは10日で7キロも体重が落ちた。異常なスピード。食事も簡単にすますために、病院の流動食とか考えてますよ」
 南極海では、高さ10メートルの波が待ち受ける。ビルの3~4階の高さから襲う波に時速50キロで突入する。恐怖心しかないが…。好奇心の底が見えない冒険家の視点は違った。
 「誰もやってないからどうなるか分からない。ハハハ。どうなるか分からないのが、このレースの醍醐味(だいごみ)なんだよね。分かってたらつまらないでしょ」
 1994年に当時の史上最年少記録26歳で単独無寄港無補給の世界一周を達成した。今回の予選レースでは「いつの間にか最年長」と笑う。53歳。キング・カズと同じ年で世界最高峰に挑む。そして、師匠・多田雄幸さんが世界一周の単独ヨットレース「アラウンド・アローン」(1982~83年)で優勝した年齢とも一致する。
 「自分が20歳くらいの時、53歳はずいぶん年寄りに見えましたよ。多田さんは、今のような装備のない時代で本当にタフだった。やればやるほど『偉大だな』って思う。多田さんはオケラ5世(ヨット名)で優勝した。僕も同じ5代目のヨット、53歳での挑戦。縁起がいいですね」
 白石は目を細めて言った。手にした新艇は長さ18・28メートル、幅5・85メートル、高さ29メートルで総工費は約8億円。マストが折れて途中棄権した前回大会は1・7億円の中古艇だった。白髪交じりの海男は感慨を込めて言う。
 「ここまで来るのに30年かかった。正直言えば若いころにこの船が欲しかったよ。でも、何年かかっても新艇を持てたのは幸せ。ドックで自分の船を見たときは『よくここまで来たな』ってね。ここまで『できる』って言ってくれる大人は1人もいなかったから」
 「今の時代、否定したり、ネガティブな発言をする大人が多いでしょ。だから、若い人たちには『何でもできるよ』って言ってあげる。なぜなら、俺はそれを証明できるから。俺みたいに好きなことやって、好きなように生きればいいんだよって。どうなるかって?俺みたいになる(笑)」
 閉塞(へいそく)感の漂う世の中だからこそ、モットーの「世の中を明るく元気に」が輝く53歳。夢に見た新艇で世界中の海と大いに“遊び”、アジア勢初の完走を目指す。

レースに向け抱負を語る白石康次郎

 ▼白石康次郎(しらいし・こうじろう) 1967(昭和42)年5月8日生まれ、神奈川県鎌倉市出身の53歳。94年にヨットによる単独無寄港無補給での世界一周を当時の史上最年少記録26歳で達成。2002~03年に単独世界一周レース「アラウンド・アローン」クラス2で4位。06年には同「ファイブ・オーシャンズ」クラス1で2位。16年に同「ヴァンデ・グローブ」にアジア人として初出場もリタイア。趣味はドライバーの最高飛距離383ヤードを誇るゴルフ。
 ◆ヴァンデ・グローブ フランスの「レ・サーブル・ドロンヌ」を発着点に、単独無寄港無補給で世界一周(約4万8000キロ)のタイムを競うレース。4年に1度開催される。1989年から2016年まで計8回大会で延べ166人が出場し、完走者は同じく88人。第1回優勝者は世界一周に109日間かかったが、第8回優勝者は74日間まで記録を縮めた。今大会は33チームが参加予定。

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