手書きの世界広がる 福井 石川九楊さんの企画展

2020年10月27日 05時00分 (10月27日 09時41分更新)
初公開となる連作「はぐれ鳥とべ」の習作の前に立つ石川さん=いずれも福井市の県ふるさと文学館で

初公開となる連作「はぐれ鳥とべ」の習作の前に立つ石川さん=いずれも福井市の県ふるさと文学館で

  • 初公開となる連作「はぐれ鳥とべ」の習作の前に立つ石川さん=いずれも福井市の県ふるさと文学館で
  • 米同時多発テロ事件を題材に、自作の詩を書にした作品(右)

 現代日本を代表する書家で評論家の石川九楊(きゅうよう)さん(75)=越前市出身=の軌跡をたどる企画展「石川九楊の世界 書という文学への旅」が、福井市下馬町の県ふるさと文学館で開かれている。来年一月二十四日まで。初日は石川さんが会場を訪れ、手で文字を書くことに込める思いを語った。
 石川さんは一九四五(昭和二十)年、旧粟田部町に生まれ、武生市(いずれも現在の越前市)で育った。五歳で書を始め、藤島高、京都大を卒業。十一年間の会社勤めを経て、作品制作と執筆活動に専念。これまでに書を千点、著作は百点以上を発表し、最前線で活躍している。
 企画展では、古代中国から現代日本までの書にまつわる歴史を論じた評論など全著作百十六冊を紹介し、装丁や題字を担当した本も。書は八十四点が並び、石川さんの創作の歩みをたどることができる。
 二〇〇一(平成十三)年の米同時多発テロを題材に自作の詩を書にした作品や、初公開となる連作「はぐれ鳥とべ」の習作四十一点が目を引く。「ふるさとでの展覧会ということで心が緩み、普段は外に出さないものまで出展した」と石川さん。手書きの校正原稿や、愛用する筆、縦百二十センチ、横六十センチ、高さ十五センチ、重さ三百キロの巨大すずりなども並ぶ。
 書家として今の時代をどのような言葉で表現すべきかを探求し、作品で用いる手法を革新し続けてきた。同時に評論家として「書く」とは何か、自ら解き明かし、言葉にして発表することで世の中と共有してきた。評論の核となるのが「筆蝕(ひっしょく)」という考え方で、手に持つ筆やペンが紙に触れ、文字を残して離れるまでに摩擦や振動、音など「さまざまな出来事」が起こる。この筆蝕によって言葉が生み出され、自分の考えが文字に表れると考える。
 「言葉は人間の証し。手書き文字は、自分自身の心の奥底にあるものを引っ張り出して書くので、精神の安定にもつながる。パソコンやスマートフォンに慣れ親しむ若い人も、手で書くことの深みを感じ取ってほしい」と話した。
 観覧無料。火−金曜は午前九時〜午後七時、土・日曜と祝日は午後六時まで。月曜休館。 (成田真美)

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