<月刊ジブリパーク> パークの設計図(2) 大倉庫エリア

2020年10月25日 16時09分 (10月25日 16時10分更新)
 宮崎吾朗監督(53)への単独インタビュー。2回目は、展示施設や子どもの遊び場などとともにスタジオジブリの関連資料の収蔵庫を備える「ジブリの大倉庫エリア」について語ってもらいます。 (聞き手・古谷祥子)

大倉庫エリア内部の鳥瞰見取り図 (c)Studio Ghibli

ごちゃ混ぜ

 「ジブリの大倉庫エリア」は、温水プールだった建物の中身を撤去して造ります。お客さんには、二階から入っていったん一階に下り、ぐるぐる回って二階から出ていただく計画です。もっとスムーズな動線も考えましたが、変えた。するっと出ちゃうと、引っ掛かるところが無いからです。

大倉庫エリアの完成イメージ (c)Studio Ghibli


 総合デザインを手掛けた三鷹の森ジブリ美術館は、一階から地下に下りて二階へ上がってもらうよう階段、部屋を配置していますが、計画段階では時計回りと反時計回り、どちらの動線が面白いか、宮崎駿とうんうん悩みました。結果、時計回りにしましたが、後で読んだ本によると、反時計回りの方が人間の感覚的にスムーズなんだそうです。時計回りは引っ掛かるというか、違和感がある。それが面白さにつながるんですね。大倉庫も「何か変だぞ」と感じながら、探検するように歩いてほしい。広いので二、三時間はかかるんじゃないでしょうか。
 雰囲気は、ちょっとフェイクな感じの方が合うのかな、と。ジブリ美術館は、名前に「美術館」とあるので品の良さも求められますが、こちらは倉庫。大きな箱の中にすてきな物、怪しげな物、ごちゃごちゃと混ざっている方が面白い。

間口を広く

 ジブリ美術館は、宮崎駿作品なんだと思うのです。個人の理想を極力、現実にするプロセスをたどっているので、作家性が強く出ています。でも、大倉庫は個人の作家性によるのではなく、アイデア、熱意さえあれば新しいことができるよう、間口を広くしておきたいと考えています。

大倉庫エリアの完成イメージ (c)Studio Ghibli


 これは僕の個人的な思いですが、先々、企画展示を替える際はジブリ作品にこだわらず、アニメーション全体に対象を広げたっていい。例えば庵野秀明作品、新海誠作品は、ジブリ美術館では無理でも大倉庫では扱える、というように。もう少し懐深く、「中日ドラゴンズの栄光」展だっていいし、愛・地球博が開かれた場所だから、欧州で始まった万博がどういう形で世界に受容されてきたのかを紹介する「万博の歴史」展だっていい。
 展示に限らず、建物や子どもの遊び場についても不断に手を入れていく姿勢が大事だと思います。「お金をかけて造りました。あとは維持するだけです」では、だんだんすすけていくというか、元気が無くなる。面白そうだ、やってみようということに挑戦できる場でありたいと思います。
 中身を充実させられるかは、オープン後のやり方次第。倉庫の容量が足りなくなるほど、豊かになっていけばいいですね。
※ 宮崎吾郎監督へのインタビュー1回目はこちら

 宮崎吾朗(みやざき・ごろう) 1967年、東京都生まれ。スタジオジブリ作品「ゲド戦記」「コクリコ坂から」などを監督。ジブリパークの整備を統括する。最近読んで面白かった本は小川さやか著「チョンキンマンションのボスは知っている」(春秋社)。

「サツキとメイの家」旧管理棟解体 移築して休憩施設へ

 昭和の田園風景が整備イメージのどんどこ森エリアで9月上旬、既設の「サツキとメイの家」の旧管理棟解体工事が行われた。

「サツキとメイの家」の旧管理棟を、移築のため解体する大工たち=愛知県長久手市の愛・地球博記念公園で

 旧管理棟は愛・地球博の際、宮崎吾朗監督が設計を統括したサツキとメイの家とともに、日本家屋の伝統的工法で建てられた。それから15年。現場を視察した宮崎監督は、軒桁と柱をつないでいた「込み栓」と呼ばれる部材を拾い上げ笑顔を見せた。「ほら、まだ木の香りが残っています。内側はどこもできたてのような色合い。経年劣化した所も、少しかんなをかければ十分使える」
 壁土、建具を含め部材の多くは転用され、もののけの里エリアで休憩所のような施設に生まれ変わる。昔よくあった、屋敷丸ごとの引っ越しだ。大工の中村武司さんら建設に携わった職人たちが再度集まり「建てた手順の逆回し」(宮崎監督)で解体が進んだ。くぎも1本ずつ抜き、重機で一気に壊すのに比べ3倍近い時間をかけた。「まずは垂木を外そうか」などと声を掛け合いながらてきぱきと手を動かす様子を、大手ゼネコン鹿島の現場担当者も「勉強になる」と、感心した表情で見守っていた。

雨どいの「菊しぼり」を指でさす大工の中村武司さん=愛知県長久手市の愛・地球博記念公園で

 撤去された雨どいの先端には、金属板を蛇腹状に加工し花のように見せる板金技術「菊しぼり」が施されており、旧管理棟が細部にこだわって建てられたことを改めて印象づけた。
 転用部材で建てられる施設は、板ぶき屋根を石で押さえる、これまた古風なたたずまいとなりそう。宮崎監督は「うどんやあんみつといった軽食も楽しめるようにできれば」とアイデアを語った。 (谷村卓哉)
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