記念展は よりすぐり130点 国立工芸館 あす開館

2020年10月24日 05時00分 (10月24日 11時09分更新)
金子潤《Untitled(13−09−04)》2013年 写真‥太田拓実
=作品は東京国立近代美術館所蔵、写真提供も

金子潤《Untitled(13−09−04)》2013年 写真‥太田拓実 =作品は東京国立近代美術館所蔵、写真提供も

  • 金子潤《Untitled(13−09−04)》2013年 写真‥太田拓実
=作品は東京国立近代美術館所蔵、写真提供も
  • 25日にオープンする国立工芸館(旧第九師団司令部庁舎(左)と金沢偕行社)=金沢市出羽町で
  • 開館を前に抱負を語る唐沢昌宏館長=金沢市出羽町で
 金沢市出羽町に移転した国立工芸館(東京国立近代美術館工芸館)が二十五日に開館する。近代日本工芸を代表する約三千九百点のうち千九百点が石川に移される。開館記念展「工の芸術−素材・わざ・風土」ではこのうちよりすぐった百三十点を紹介。自然や土地と向き合ってもの作りに取り入れてきた日本の工芸の原点を考える展示になる。(松岡等)=敬称略
 陶芸、漆芸、金工、ガラス、染織など、明治以降のさまざまな分野の工芸作品が並ぶ。金沢市出身で「漆聖」とも呼ばれた松田権六(ごんろく)、石川県工業学校(現石川県立工業高校)で教えた後に日本の近代陶芸を確立した板谷波山(いたやはざん)、能登の風土に根ざす合鹿椀(ごうろくわん)に魅せられた漆芸家角偉三郎ら石川ゆかりの作家。明治の金工作家・鈴木長吉の「十二の鷹(たか)」(重要文化財)の超絶技巧は見応えがある。このほか「紬織(つむぎおり)」の染織家志村ふくみら現役の人間国宝らの作品を堪能できる。
 また、館内には松田権六の工房を移築、復元。開館記念でクラウドファンディングを活用して制作を依頼した九谷焼赤絵の見附正康(石川県加賀市)ら若手作家十二人の新作、新たに収蔵した金子潤の高さ三メートルを超える大作もお目見えする。旧陸軍第九師団司令部庁舎と金沢偕行社を移築したクラシックな洋風建築の外観も見どころだ。
 新型コロナウイルスの感染拡大で、七月を見込んだ開館が約三カ月遅れた。観覧は日時指定・定員制で、オンライン予約が必要になる。予約は国立工芸館のホームページから。

地方移転の成功例示したい 唐沢昌宏館長 抱負語る

 一九七七年の開館から四十数年、東京での実績を継続しながら、新たな地だからできることをやっていきたい。日本の工芸を系統立てて紹介してきたが、改めて振り返って見えてくるもの、発見や驚きがあるはず。今の時代だからできることも盛り込んでいきたい。
 開館記念展では、素材、技、風土というキーワードで工芸という分野をひもとく。工芸を知る上で、分かりやすい入り口になる。明治、大正、昭和のつながりを線でとらえることで、その先が少し見えてくるのではないか。
 移転が決まった最初は、東京を出てどうなるのかと思ったが、今はメリットが大きいと感じている。近隣の県立美術館や歴史博物館、いしかわ生活工芸ミュージアムと一緒にイベントをするにも小回りが利くし、金沢21世紀美術館や金沢美術工芸大をはじめとする各大学と連携や研修などもできる。
 工芸に対する石川県や金沢市の支援は、作り手にも鑑賞者にも手厚い。ただ逆に言えば作り手のハングリー精神をそぐ恐れもあり、しっかり刺激を与えていくことも役割だと思う。工芸館は物差しと考えてもらえればいい。金沢にはないものを見ることで金沢の良さを改めて感じ、全国の工芸の中で石川、金沢の工芸がどういう位置にあるのかというのを知ってもらえるはずだ。
 本館である東京国立近代美術館から離れたことで、金沢で企画したものを本館で、あるいは本館でやったものを金沢でと、巡回ができるかもしれない。ここで活動できるのは、工芸にとっていいのではないかと思える。地方移転した国立美術館の成功例を提示できるよう、期待をいい意味でのプレッシャーにしながら取り組みたい。
 県立美術館ではしっかり伝統工芸を見せているので、こちらは伝統だけにこだわらず、全国的な視野での工芸、新しいデザイン的な作品を見せていく。開館記念ではクラウドファンディングで若い作家に茶の湯の器をメインにして作品を作ってもらった。それらを使った参加型のイベントも考えている。
 新型コロナウイルスの感染拡大で開館が遅れたが、延びた三カ月間で、工芸品には重要な温度や湿度の調整などの準備がしっかりできた。展示室も収蔵庫も万全な状態にあり、多くの人を迎えたい。 (聞き手・松岡等)

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