ブランド種苗 流出防げ 農家と契約 書石川県管理徹底

2020年10月24日 05時00分 (10月24日 05時00分更新)
石川県が育成した高級ブドウ「ルビーロマン」=2017年9月15日、同県内で

石川県が育成した高級ブドウ「ルビーロマン」=2017年9月15日、同県内で

  • 石川県が育成した高級ブドウ「ルビーロマン」=2017年9月15日、同県内で

識者「許諾ビジネス検討を」


 日本で品種登録されたブドウやイチゴを思わせる名称の種苗が中国と韓国でインターネット販売されていた問題で、高級ブドウ「ルビーロマン」の育成者権(知的財産権)を持つ石川県などが種苗の流出に目を光らせている。そんな中、対策を盛り込んだ種苗法改正案の行方が注目されている。(押川恵理子)
 農林水産省は九月下旬、三十六品種について同じ名称か、その品種を思わせる別名の種苗がネット販売されていると発表した。調査はイネなど七百三十七品種を対象に行ったが、日本品種そのものかどうかは特定していない。発表後、野上浩太郎農相は優良品種の管理が緩いとして、種苗法改正案を「早急に成立させる必要もある」と述べた。
 調査でルビーロマン関連の情報も中国のサイト二つで発見されたが、一つは名称、掲載写真とも別品種と県が確認。もう一方は県のホームページ掲載のルビーロマンの画像が無断で使われていたが、「販売」の文言はなかった。画像は既に削除された。県は「流出はない」と結論づけた。
 ルビーロマンは県が十四年かけて育成し、二〇〇八年に市場デビュー。海外の富裕層にも人気があるという。県は農家と契約書を交わし、有償・無償を問わず第三者に苗木を譲渡しないことや、栽培をやめる際は苗木を県に返すか、県の立ち会いで処分することを徹底させている。国内対策に力を注ぐのは「中国に流出すると対抗措置は困難。中国で育成者権を取るには年月とコストがかかる一方、実効性が疑わしい」(県生産流通課)からだ。
 では種苗法改正案は流出防止の切り札となるのか。富山大の神山(こうやま)智美准教授(環境法)は「意図しない外国への輸出や指定地域外での栽培ができなくなり、海外流出を防ぐ効果はある」とみる。改正されれば、日本の育成者権の効力が外国で適用される特例ができるほか、海外への持ち出しを知りながら種苗を譲渡した者も刑事罰や損害賠償の対象となる。
 外国に流出した際の対応として、神山准教授は種苗生産の許諾料を得る「許諾ビジネス」を提案する。例えばある国で一社と契約すれば、その正規業者が同業他社を監視し、対処する仕組みができるという。
 種苗法改正案は農家の負担増などへの懸念が広がり、国会で継続審議となっている。神山准教授は「自家増殖に許諾が必要となるのは登録品種だけで、ほとんどの一般品種は対象外のため、農家への影響は少ない」と説明。農水省によると、育成者権を持つのは国など公的機関が多いため、許諾の手続き、許諾料とも農家の負担は抑えられる見通しだ。

 種苗法改正案 日本で品種登録されたブランド農産物の海外流出を防ぐため、登録品種については生産者が自家増殖する際に許諾が必要となる。全体の約9割を占める一般品種(在来種を含む)はこれまで通り自家増殖できる。例えば一般品種の割合はイネで83%、ミカンでは98%に上る。登録品種は2018年度末で8135品種あり、うち3分の2は花が占める。最長25年(果樹は最長30年)の育成者権が消失すると、自家増殖の許諾は不要となる。


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