高齢者の労災増 対策遅れ

2020年10月23日 05時00分 (10月23日 10時07分更新)

石川10年で1.5倍 筋力低下、転倒多く


 転倒などにより職場でけがをし、労災を申請する六十歳以上の人が全国で急増している。治療のため休業四日以上かかる死傷者数はこの十年で一・五倍になり、石川、富山両県でも同様の傾向にある。年を重ねるうちに身体能力が低下し、けがをしやすくなっているが、雇用者の理解が進まず、十分な対策が取られていないことが背景にある。(高橋雪花)
 今年一月、石川県内のある旅館。七十代の女性従業員が宴会後の食器を台車で運んでいたところ、床にこぼれた水で足が滑り転倒。右足を骨折し、一カ月の休業を余儀なくされた。昨年五月には同県内の旅館に勤める七十代男性が脚立に乗りベランダで窓ガラスを清掃していたところ転落。約十九メートル下の小川まで落ち、全身を打って亡くなった。
 厚生労働省などによると、昨年、六十歳以上の人が仕事でけがをしたのは三万三千四百九人で、全体の27%を占める。死者は三百六人で、全体の36%。石川県の昨年の死傷者は三百五十四人で、十年前の一・五倍。富山県は三百二十八人で、十年前より一・二倍になった。
 目立つのは転倒で、六十歳以上の死傷者数の四割弱を占める。厚労省の担当者は「筋力やバランス感覚の低下が影響していると言われている。ちょっとした段差につまずいたり、重い物を持ってバランスを崩してしまうケースが多い」。女性は男性の二倍と多く、骨粗しょう症になりやすいことが関係しているとみられている。
 高齢なほど重症化につながりやすい。休業見込み期間を年代別に比べると、二十代で一カ月以上にわたるのは四割だが、六十代では六割超。七十歳以上では七割を占める。定年延長や人手不足を背景に、高齢の労働者は今後も増えると考えられている。

床拭き、段差解消、空間明るく…
危険の芽摘んで 労働局呼び掛け


 事態を重く見た厚生労働省は三月、高齢労働者の安全確保のためのガイドラインをつくり、具体的な対策を呼び掛けている。
 転倒防止には床に残る水や油をこまめに拭くことや、通路の段差をなくすこと、階段や通路を十分明るくすることを挙げる。転落を防ぐため、高所での作業をできる限り避け、ヘルメット着用を効果的とする。
 これらは中央労働災害防止協会(東京都)が二〇一八年に作成した「エイジアクション100」にまとめたものだ。
 これらの対策があまり進まないのは、高齢者が増えているにもかかわらず、高齢者の労災リスクを雇用者側が十分に認識していないためと考えられている。対策にかける予算の確保も難しいという。
 労災が起きると高齢労働者と職場に与える影響は大きい。石川労働局健康安全課の松永房明課長補佐は、労災リスクをリスト化し、優先順位の高い項目から解消していくなど「危険の芽を摘んでほしい」と訴えている。
 厚労省は三十一日まで、中小企業に向け、高齢者が働く環境の改善にかかった費用に対する補助金の申請を受け付けている。問い合わせは厚労省の関係団体エイジフレンドリー補助金事務センター=電03(6381)7507=へ。

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