中日春秋

2020年10月22日 05時00分 (10月22日 05時00分更新)
 エジプトでミイラが発見された。だれのものか、考古学者も分からない。ソ連から「その筋の専門家」が呼ばれる。さとう好明著『ロシア小話 アネクドート』にあるジョークである。ミイラの部屋に一日こもった「専門家」が汗をぬぐいながら出てきて、ミイラの正体である王の名を言う。「自白したんだよ」
▼古代の王も口を割る。恐怖と非情で冷酷な手段を駆使して、その筋の人々が暗躍した国ならではの小話だろうか。旧ソ連時代、その筋を思わせる組織としては国家保安委員会(KGB)が有名だったが、いまも続くロシア軍参謀本部情報総局(GRU)もある
▼近年では、英国で起きた毒物による暗殺未遂事件や平昌冬季五輪などへのネットを通じたサイバー攻撃など、いくつもの事件でGRUの三文字が浮上している
▼本当だとするなら、東京五輪・パラリンピックは、えらい筋に目を付けられたことになる。五輪の主催団体などが、GRUのサイバー攻撃の標的になっていたと英政府が明らかにした
▼組織的なドーピング問題で除外処分を受けたロシアの反発が背景にあると英メディアは指摘しているそうだ。あちらの恨みをこちらで。理解するのは難しいが、非情の世界の理屈なのだろうか
▼「ぐる」と読めば、よからぬたくらみを持つ一味を思わせる。暗躍への対策までも開催へのハードルに加わっているようだ。

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