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中国・赤峰市 後ろめたさの裏返し

2020年10月20日 16時00分 (10月20日 16時10分更新)
 まだ明るい午後三時、円卓に大皿のモンゴル料理が並び、地元当局者六人が私に上座を勧める。「昼間から大丈夫? 暇なんですか?」。私の皮肉をかき消すように、六人が「大事なお客さんだから当然だ」などと言いながら、馬乳酒での「カンペイ(乾杯)」を何度も迫る。
 その日は寝台列車に乗り、早朝に内モンゴル自治区赤峰市に着いた。同化政策の強化に反発するモンゴル族を取材する目的だったが、当局の情報統制と取材への制限は厳しい。郊外の中学校近くを訪れると、あっという間に「地元政府の宣伝部」という当局者らに囲まれた。
 「取材に協力したい」と低姿勢ながら「どこまでも付いていく」ともいう。ふと気づくと当局者は十人近い。やむなく取材を諦めた。その後はモンゴル文化が主題のテーマパークやチベット仏教の寺院を案内された末、「お茶を飲もう」と入った店で冒頭のようになった。やんわりとした拘束といえる。
 滑稽にも見える過剰な情報統制は、自らの政策に対する後ろめたさの裏返しか。その夜は空港の安全検査を通るまで見送られ、「ご苦労さま」と声を掛け合って別れた。(中沢穣)

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