<ユースク>国勢調査員不足がコロナで深刻化 自治体職員、休日に走る

2020年10月20日 05時00分 (10月20日 23時46分更新)
国勢調査への協力を呼び掛けるため地域を巡回する調査員。本業は地方自治体に勤める公務員だ=愛知県内で

国勢調査への協力を呼び掛けるため地域を巡回する調査員。本業は地方自治体に勤める公務員だ=愛知県内で

  • 国勢調査への協力を呼び掛けるため地域を巡回する調査員。本業は地方自治体に勤める公務員だ=愛知県内で
 国勢調査は二十日に回答期限を迎える。今回は新型コロナウイルス流行の影響で調査員のなり手不足が深刻化。本紙の「Your Scoop〜みんなの取材班」には「地方自治体の職員が調査員を兼務して休日を調査業務に充てている」との声が寄せられた。取材を進めると、調査員確保のために職員にしわ寄せが集まる実態が浮き彫りになった。 (大野雄一郎)
 日曜日だった十八日昼、愛知県内の地方自治体に勤める四十代職員が、調査票やチラシが入った青色のバッグを傍らに家々を回っていた。未提出の世帯を訪問し、協力を呼び掛ける督促業務だ。ある家では、高齢女性が玄関のドアを二十センチほど開けて応対し、「子どもから『そんなの提出しなくていい』って言われちゃったのよね」と苦笑い。調査員は「大切な調査ですので」と訴えた。
 この職員が勤める自治体は、新型コロナの感染が拡大した春先に調査員を公募。だが、外出自粛が呼び掛けられる中で、他人との接触機会が増える業務ということもあり、感染リスクを恐れて応募が低迷。必要な数が集まらず、結局は三分の二が職員の兼務となった。強制ではないものの、「本音では嫌がっている職員もいると思うが、当然協力するよねという雰囲気が庁内にある」という。
 この調査員は、調査票の投函(とうかん)や催告のため担当する二地区百世帯に何度も足を運んだ。時間が取れるのは休日しかなく、期間中は土日のどちらかは必ず担当地区を二〜三時間ほど巡回。不審に思われた住民に、首から下げた身分証を乱暴に引っ張られたことも。報酬は給与とは別に五万円前後支払われるが、手間を考えれば「お金の問題じゃない」という。
 総務省によると、全国で必要な調査員の数は約七十万人。「一般の人が務めるのが望ましい」(担当者)のが建前だが、不足分に自治体職員を充てるのを認めている。五年前の前回調査では約一割が自治体職員で、コロナ禍の今回はさらに増えそうだ。
 愛知県春日井市では、千二百四十五人の調査員のうち八割近い約九百八十人を市職員で賄った。一般公募での応募は約百五十人にすぎなかった。同県半田市でも六百十九人の調査員のうち、市職員が四百二十人と七割を占めた。五年前の前回調査からは若手職員を「指名」し、市職員の兼務を前提にした確保計画を立てざるを得なくなっている。三重県四日市市や福井県敦賀市はホームページなどで公募したが、応募はゼロだった。
 職員を動員していない自治体の多くは、各町内会に要請して調査員を推薦してもらう方式で必要数を確保している。ただ、新型コロナ流行で後から辞退する人が出た自治体もあった。長野県上田市の担当者は「個人情報を取り扱うため、『市の仕事として調査を』との声も聞く。国が今後五年間かけて負担軽減の方法を考えてほしい」と話す。

郵送が手間、回答法分からず 識者「手法変える過渡期」

 2015年の国勢調査では、直接回答を得た回答率は86.9%。今回は18日時点で郵送とインターネット合わせて全国で80.6%となっている。
 中部6県では13日時点で、福井県の79.0%が最多。岐阜県(78.8%)、長野県(77.1%)、滋賀県(76.8%)、愛知県(76.3%)が続き、三重県(69.1%)が最も少なかった。
 三重県亀山市の飲食店従業員の男性(28)は、新メニュー考案などに追われ未提出。「調査票を郵送するのが手間で、すっかり忘れていた」。インターネットで回答できると知らなかった。
 「回答方法がよく分からなくて…」と話すのは、愛知県春日井市の会社員女性(23)。恋人と同棲(どうせい)中で、自宅に届いた2人分の調査票は放置したままだ。
 15年の前回調査では、プライバシー意識の高まりなどを受け、本人から直接回答が得られない未回答率は13.1%に上った。今年は国勢調査が始まって100年の節目。未回答が増えれば、調査の精度が保てなくなる。
 昇秀樹・名城大教授(行政学)は「地方自治体の職員が休みを利用して調査業務をする現状は健全ではない。一般の人が調査員を務めるという前提が崩れており、調査の手法を変えていく過渡期に来ているのではないか」と指摘。「5年後にはIT機器を扱える高齢者も増えてくるので、さらにデジタル化を進めていく必要があるだろう」と話している。 (大野沙羅、松本貴明)

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